おでかけ

山と空とお湯の色彩が美しい! 福島の山あいで源泉掛け流しを堪能 「高湯温泉 吾妻屋」 【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】

(福島県福島市 高湯温泉)

 6月も終盤を迎え、気温も湿度もグングン上がってきました。夏のジメジメ感の到来ですね。少し外に出るだけでも汗が吹き出し、服が体にペタっと張り付くなんとも不快な季節です。夏らしいといえば夏らしいのですが、そんな環境から逃げ出して、爽やかな気候の山あいに出かけたくなります。そこに温泉があればさらにうれしいですね。

 今回は、福島県の山あいに位置し、山の緑、青い空、乳白色の硫黄泉の色彩豊かな露天風呂を堪能できる宿「高湯温泉 吾妻屋」をご紹介したいと思います。

「高湯温泉 吾妻屋」外観

 福島市街から車で約30分とアクセスの良い高湯温泉。標高750メートルの程よい高原に、10軒弱の旅館・ホテルが点々と立ち並ぶ静かな温泉地です。福島の奥座敷といった風情。400年以上の長い歴史を持ち、江戸時代から湯治場として栄えてきました。現在でも、源泉そのものが全国有数の硫黄濃度を誇り、薬効の高い温泉として知られています。

 そんな高湯温泉街の真ん中あたりに立つ「吾妻屋」は、創業140年にもなる老舗旅館。東北の歌人・斎藤茂吉が逗留(とうりゅう)した記録もあるのだそうです。客室10室のみの落ち着いた雰囲気。日帰り入浴不可のため、館内は宿泊客のみでゆったりと過ごせるお宿です。

「男女別内湯」全景
男女別内湯の「湯口」

 吾妻屋のお風呂は、男女別内湯のほか、男女別露天風呂「山翠(さんすい)」、貸切露天風呂「風楽(ふうらく)(雪、月、花の3か所)」、貸切内湯「古霞(ふるがすみ)」の計6か所。この数のお風呂を、わずか10部屋の宿泊客のみが、好きな時に好きなだけ入れるのですから贅沢(ぜいたく)ですよね。すべての湯船で高湯の源泉を掛け流す湯使いも圧巻です。

 男女別の内湯は、木の浴室の中に、大きい岩石とどっしりしたスギの木、その木を利用した湯口が配されたワイルドなつくり。浴室に入った瞬間から感じる硫黄の甘い香りと、湯口からドバドバと流れる源泉のサウンドを聴きながらの湯浴みは、高湯のお湯に没頭できる空間です。

男女別露天風呂「山翠」全景

 内湯も風情がありますが、吾妻屋のハイライトともいえるお風呂は、男女別露天風呂「山翠」。宿泊棟から外に出て、80メートルほど森の中の道を上がると、高台にポツンと現れます。10人以上は入れそうな湯船には、ミルキーブルーに輝く源泉が注がれ、山の濃い緑と、青い空、白い雲の鮮やかなコントラストが息をのむほどの美しさです。湯の甘い硫黄の香りに、風に乗って運ばれる山の緑の香りが絶妙にブレンドされ、鼻孔をくすぐります。深呼吸すると、ここでしか味わえない温泉と高原のアロマセラピーを堪能することができます。

貸切露天風呂「風楽(雪)」全景

 泉質は、酸性-含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩泉(硫化水素型)。甘く濃い硫黄の香りは、いかにも温泉らしい情緒が漂います。乳白色のお湯は、光の強さや当たり方によって、青や緑にも変化して見え、時間帯や天気、お風呂の場所で異なる色合いを楽しめます。酸性の泉質のため、舐(な)めると酸味が強め。その中にも硫黄独特の甘味があり、薄めのレモン水を飲んでいるような味わいでした。スベスベでサラサラな肌触りが心地よく、湯上りはそのサラサラ感が乗り移ったかのように、肌の調子が整っていました。

夕食の一例
福島牛のしゃぶしゃぶ

 吾妻屋のご主人手作りの夕食は、半個室の食事処でいただきます。メニューは、山菜や会津の郷土料理がメイン。福島の山の幸、海の幸が並び、温かい料理は一品一品出来たてを運んでくれます。新鮮なお刺し身、岩魚の塩焼き、福島牛のしゃぶしゃぶ、山菜の煮物などなど、舌と胃袋が喜ぶお食事でした。

記念に一枚

 ジメジメする季節でも少し足を延ばして高原に行けば、爽やかな気候が味わえるもの。この時期の山の露天風呂は、濃い緑と青い空の鮮やかな空間を楽しめることでしょう。ちなみに高湯温泉は、秋の紅葉、冬の大雪も露天風呂で堪能できますので、どの季節でも違った良さがありますよ。夏場は温泉のイメージがない、という方もいらっしゃると思いますが、夏こそ温泉が気持ちいい、と私は思います。

【高湯温泉 吾妻屋】

住所 福島県福島市町庭坂字高湯33

電話番号 024-591-1121

【泉質】

酸性-含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩泉[硫化水素型](低張性 酸性 高温泉)/泉温49.1度/pH:2.6/湧出状況:自然湧出/湧出量:483リットル/加水:不明/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆掛け流し

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,400以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。