ジェンダー

生理痛には“我慢”ではなく“適切な対処”を 第一三共ヘルスケアが⾼校教師向けセミナー・ワークショップ開催

「生理」について正しく理解し、生徒たちの人生に生かしていくために何ができるかを話し合う教師たち
「生理」について正しく理解し、生徒たちの人生に生かしていくために何ができるかを話し合う教師たち

 

 女性と男性で大きく異なる体のメカニズムについては、ひと昔前と比べればオープンに話題に上ることも多くなったかもしれない。それでも月経=生理についてはまだ、女性自身が「生理は病気ではないから我慢できるなら我慢しよう」と、“我慢”で対処してしまう場面も少なくないのではないだろうか。

 女性が若いうちから「生理痛を我慢せずに自分に合った対処法を選択することの大切さ」を学んだり、性別を問わずより多くの人に「生理痛に悩む人に思いやりを持って接するために必要なこと」を考えたりする機会を持ってほしい――。第一三共ヘルスケア(東京)は今年3月、生理痛のメカニズムに着目した鎮痛薬の新製品「ロキソニンSプレミアムファイン」の発売とともに、「みんなの生理痛プロジェクト」を始動。「生理痛と正しく向き合える社会へ」をコンセプトに、情報発信などの活動を展開してきた。その一環として、同社と、女性のウェルネス課題の解決・支援事業を行う「Fermata」(東京)、埼玉県立大宮南高校の三者がタッグを組み、今年12月に、同校の1年生に向けて「生理痛について学び・考える授業」を実施する。それに先駆けて10月18日に同校で、主に1年生担任教師に向けた生理・生理痛について考えるセミナー・ワークショップが行われた。

 高校1年生に向けて「生理痛について学び・考える授業」を実施するのには、大きな目的が2つある。まず、生理痛の対処法のひとつである鎮痛薬(市販の鎮痛薬のうち、服用年齢が15歳以上である非ステロイド性抗炎症薬「NSAIDs」の成分を配合したもの)が服用可能となるタイミングで、痛みに悩む生徒がただ我慢するだけでなく自分に合った対処法という選択肢があることを知らせること。さらに、痛みに悩む人に思いやりを持って接するために必要なことを考え、本人だけでなく周囲も含め皆で生理という女性の体の仕組みと向き合うきっかけを提供すること。

 教師向けセミナー・ワークショップには、9人の教師が参加。まず、産婦人科医・高尾美穂氏からオンラインで、生理・生理痛のメカニズムや対処法、高校生の生理痛への対処の実態などを解説。その後、生徒への事前アンケート結果等を踏まえ、生徒が“自分ごと化”できる授業の具体的な内容や進め方について、教師たち同士で考えるワークショップを行った。

 高尾氏は、「ジェンダーの平等を実現していくためには、縮めることができない“男女の生物学的な性差”をお互いが理解していくことが必要」と指摘。女性だけに備わる臓器である卵巣と子宮について、「卵巣がしっかり働いて女性ホルモンのエストロゲンをしっかり分泌することによって、子宮もその働きを十分に発揮することができ、人という種を残していくことができる。卵巣は50歳ぐらいで働きを終え、女性の生殖能力にはタイムリミットがあるからこそ、将来の働き方や思い描く家族構成など、女性が若いうちからどんな人生を生きていきたいかを考えることはとても重要」と話した。生理が周期的に繰り返される仕組みから始まり、生理痛を含めたさまざまな体調不良である月経困難症についても解説。月経困難症には、子宮内膜症などの疾患が隠れていることもあったり、月経困難症を重く感じる人に子宮内膜症予備軍が少なくなかったりすることも挙げた。女性が生理に伴い感じる困難については、「ただ我慢するのではなく適切な対処を考える時代になっている」と述べた。

生理や生理痛の仕組み、女性のライフサイクルについてオンラインで解説する高尾美穂氏
生理や生理痛の仕組み、女性のライフサイクルについてオンラインで解説する高尾美穂氏

 

 12月に開催する高1生対象の「生理痛について学び・考える授業」では、高尾氏が来校して生理についての講演を行い、その後、各クラスで担任の先生が主導するワークショップが行われる予定。そのワークショップに向け、「教師としてできること」「学校としてできること」などが話し合われた。教師としてできることについては、「総合的な探究の時間や職業調べの時間などの中で、女性の体の仕組みやサイクルなども含めた上でキャリアを考える視点を提示する」「自分の体に自分がしっかり向き合うことの大切さを伝える」などの声が上がった。学校としてできることについては、「生理による体調不良で欠席することが不利にならない制度」「気兼ねなく相談できる場所や環境づくり」「産婦人科医との連携」「情報発信のための保健だよりの活用」などが上がった。

「教師としてできること」「学校としてできること」を付箋に書いて出し合う作業
「教師としてできること」「学校としてできること」を付箋に書いて出し合う作業

 

 「生理痛について学び・考える授業」実施に向けて必要な工夫については、「生理を体験する当事者でない男子については、授業中、部活中など具体的な場面を設定したケーススタディーが心に刺さるのでは」「難しい問題だからこそ、この授業を通して生徒たちに最後に何を伝えられるかという“着地点”を教師間でしっかり共有することが大事では」などの意見が上がった。

付箋に意見を書いて出し合う教師たち
付箋に意見を書いて出し合う教師たち

 

 今回の教師向けセミナー・ワークショップを踏まえ、12月の生徒向けワークショップの内容を詰めていく。

 第一三共ヘルスケアが運営するセルフケア情報メディア「健康美塾」は2010年から、季節に応じたスキンケアや体の症状に対処する「日常的な症状へのセルフケア」に関した同社の製品情報などを中心に発信してきた。今年6月に全面リニューアル。「生理や妊娠関連・更年期など女性特有の健康課題(フェムケア)」のテーマを加え、「日常のセルフケア」「フェムケア」の2つの軸で生活者の日々の不調・悩みに寄り添い、解決への選択肢を提示する“セルフケアのパートナー”としての存在を目指している。