デル・テクノロジーズ(東京都千代田区)は4月10日、奈良先端科学技術大学院大(奈良県生駒市)の参画を得て、中堅・中小企業のデジタル技術活用を後押しする産学連携のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援サービス「企業DXエコシステム」を新たに展開すると発表した。今後、地方大学や自治体などにも幅広く参画を呼び掛け、産学官の英知を結集し、構想段階で足踏みしがちな中堅・中小企業のデジタル技術活用の取り組みを実証事業レベルまで引き上げていきたい、としている。
このサービスは、多くの中堅・中小企業と取引するデル・テクノロジーズの強みを生かし、企業との共同研究などを求める大学側と、デジタル技術を業務効率化やビジネス創出などに活用したい中堅・中小企業とをつなげることが主な内容。両社をマッチングするための専用サイトを開設し、「業務の効率化・高度化」「問い合わせ自動応答の導入」「人工知能(AI)実装」などを求める企業側の要望に適した研究室を紹介するシステムを構築。実証研究の実施や技術指導など両者の合意内容を契約書にまとめる調整サービスも提供する。
デル・テクノロジーズがまとめた「中堅・中小企業IT投資動向調査2023」によると、調査対象企業のうち、文章や画像、動画などデジタルコンテンツを自動作成する生成AIなどの技術を活用してDXを実現したいと回答する企業は7割を超えたが、実際にDXを実現した企業は8%にとどまった。コストや人材不足などから意欲はあるがDXに着手できない中堅・中小企業が予想以上に多いことから、デル・テクノロジーズは今回、産学連携のDX支援サービスの取り組みを始めた、という。
東京都内で今回のDX支援サービス開始発表の記者会見を開いたデル・テクノロジーズの諸原裕二・常務執行役員は「産と学をつないでDXを推進し、中堅・中小企業の国際競争力の強化に貢献したい」と話した。同社の木村佳博・西日本副支社長は「広域的なサービスとするため、多くの大学や自治体に参画を働きかけていきたい」と述べた。
記者会見に同席した奈良先端科学技術大学院大の安本慶一・情報科学領域長は「大学の知識と企業の実務が融合することで新たなビジネスアイデアが生まれる可能性が高まる。大学側では研究成果が社会でどのように(具体的に)役立つのか分からない面もある。産学連携が進んで研究成果が活用されることを期待したい」と話した。
安本氏によると、先端科学技術大学院大の研究室のうち、生成AIやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、機械や自動車、家電などをインターネットに接続する仕組みであるIoT(モノのインターネット)などを研究する計7つの研究室が今回のDX支援サービスに参画するという。