ふむふむ

【キウイの本場訪ねて】<下> 「腸の健康に有益」とオークランド大研究者が説明  おいしさと栄養の一石二鳥

ソーンズさん調理してくれたラムチョップ、キウイとフェタチーズのサラダ添え

 前回までは、最新技術と人の手や目を使いながら「最高品質のキウイ」を目指し、生産者、成熟度などを検査する研究所、選果場、ゼスプリインターナショナル(以下、ゼスプリ)のそれぞれの現場スタッフの思いを伝えた。最終回となる今回は、ニュージーランドの最高峰、オークランド大学の研究者によるキウイの健康効果の研究内容や、キウイをおいしく食べることができて、栄養素も吸収できる一石二鳥のレシピを紹介する。ニュージーランドの大地の上で、数多くの人が関わり作られる、小さな果実キウイが持つ、秘められた可能性を探る。

医学部などがあるオークランド大学グラフトンキャンパス

▼栄養素の“超”優等生

 キウイの栄養成分は、他の果物と比べて、抜きんでて優等生といえるだろう。主要なフルーツの「栄養素充足率」で、ナンバーワンになっているからだ。栄養素充足率とは、果物を同じ量(100グラム)を食べた際、ビタミン、ミネラル、食物繊維など計17種類の栄養素が、基準値に対してどれくらい含まれているかを数値化したもので、その数値が高いほど、いろいろな栄養素がバランスよく含まれていることを示している。

 ゼスプリによると、主な果物のうち、「サンゴールドキウイ」が15.9で、「グリーンキウイ」が12.5という結果だったという。これは、イチゴの9.2、バナナの8.2、カキの7.5、ミカン6.5などと比べて、高い数値となっており、日常生活で摂取したい栄養素が多く含まれていることが明らかになった。

 サンゴールドキウイに着目すると、1個で1日に必要なビタミンCが取れるほか、グリーンキウイは不足しがちな食物繊維が1個で補えることが分かっている。さらに、グリーンキウイには「アクチニジン」というタンパク質分解酵素が含まれており、肉料理や魚料理など、タンパク質が多く含まれている食べ物と一緒に食べると、消化をサポートしてくれる効果が期待できるという。

 そこで、オークランド大学の農業研究所でキウイと胃腸の健康などを研究している医学博士アンバー・ミランさんらのレクチャーを受け、医学的な見地から、キウイの効能を聞くことにした。

レクチャーするミラン医学博士
レクチャー時に示された資料

▼キウイは「腸活」の食材

 ミラン先生のレクチャーは「キウイと胃腸の健康 消化管の健康と消化の快適さへのキウイによる作用」と題して行われた。ミラン先生は、機能性胃腸障害について「世界人口の6割の人が胃腸の不快感に悩まされています」と話した。ただ「(機能性胃腸障害にかかった場合)多くの要因が重なっており、明確な病因が見当たりません。根本的に改善する治療が難しく、対症療法になります」と指摘した。

 対症療法としては、食事で改善につなげることが有効とされ、ミラン先生は「より多くのエビデンスが必要ですが」と前置きした上で「これまでの研究で、グリーンキウイは便秘の治療に有効ということが分かっています。サンゴールドキウイを1日3個食べることで排便時のいきみと便の固さが改善したことも明らかになっています」と述べ、キウイが「腸活」の食材であることを医学的見地から強調した。

 次に、ミラン先生は、資料を示しながら、グリーンキウイが腸の健康をどう促進するのか、を説明。キウイを食べることで、腸機能の促進作用がある食物繊維が、便の形成や腸の通過時間短縮を促すことが分かったことや、アクチニジンがタンパク質の消化と胃の中の食べ物を腸に排出することを促進する効果があることを紹介した。

 また、便秘患者を対象にした、食物繊維が多いオオバコとサンゴールドとの比較実験では、どちらも便秘症状の改善効果がみられた一方、サンゴールドはいきみの解消メリットもあったという。

 最後に、ミラン先生は「キウイには腸の健康に有益な化合物が豊富に含まれている可能性があります。さらにエビデンスを集めていきたい」と話し、今後も医学面から、キウイの栄養分と健康促進について研究に取り組む姿勢を示した。キウイという小さな果実に、大きな可能性を感じさせる講義であった。

ソーンズさん宅の庭にある「Konnichiwa(こんにちは)」と書かれた黒板

▼「おいしく、健康に」

 栄養価が高いキウイを、そのまま二つに切って食べたり、ヨーグルトをかけて食べたりすることは多いだろう。ただ、できれば、キウイを活用した「おいしく、健康につながる」一皿も味わってみたい。

 そこで、ニュージーランド北島のビーチが近い、ベイ・オブ・プレンティに住む、管理栄養士のジェス・ソーンズさんの自宅にお邪魔し、キウイ料理を堪能した。白色の三角屋根が特徴的なソーンズさん宅には、夫、2人の子どもが住む。庭の砂場に設置されたお絵かき用の黒板には、子どもたちによって、ローマ字で「こんにちは」、先住民のマオリ語で「こんにちは」を意味する「Kia Ora」と書かれ、私たち取材チームを温かく迎えてくれた。

 ソーンズさんはニュージーランドの食文化の特徴について「先住民のマオリの料理や、イギリスの植民地時代の料理、地中海、アジア、太平洋の各料理など、多くの地域の影響を受けています」と語り、それぞれの要素が融合された食文化だ、と指摘する。具体的には、マオリに受け継がれた、肉、野菜などを土に埋めて蒸し焼きにする「ハンギ料理」、「フィッシュ&チップス」「シーフードとザリガニ」などを紹介した。さらに「ニュージーランドのチョコレート、ワインや、チーズなどの乳製品もおいしいです」と笑顔で語った。

 この日は、ニュージーランドといえば欠かせないラム肉(羊肉)と、キウイや葉野菜を添えたサラダが提供された。庭にはバーベキュー用の焼き場が設置され、ソーンズさんの夫がラムチョップを炭火で焼き、台所では、ソーンズさんがキウイを切るなど、調理を始めた。

 炭火で丁寧に焼かれたラムチョップを、バルサミコ酢ソースとからめて頬張るとやわらかい。サラダに使われているキウイのジューシーさと塩味の強いフェタチーズとの相性も良い。肉と一緒に食べると、うまみ、甘み、酸味が口の中でハーモニーを奏でていた。ソーンズさんが教えてくれたレシピは、以下の通り。ただ、フェタチーズなどはカッテージチーズなどで代用ができ、バーベキューコンロはフライパンで可とのことだ。

◎NZ産ラムチョップ、キウイとフェタチーズのサラダ添え
<ラムチョップ>(4人分)
■材料
・ ラムチョップ:8枚
A
・ 塩:小さじ1/2
・ こしょう:小さじ1/2
・ ニンニク:1片
・ クミンパウダー:小さじ1/2
・ スイートパプリカ(粉末):小さじ1/2
・ コリアンダー(粉末タイプ):小さじ1/2
■作り方
① Aの材料をボウルに入れて混ぜ、ラム肉全体にまぶし、冷蔵庫で最低2時間、できれば一晩置く
② バーベキューグリルを中火にして、オリーブオイルを塗る
③ ラムをミディアムレアで焼く場合、両面を約3分ずつ焼く
④ ラムを皿に移し、アルミホイルでゆるく覆い、5分間休ませる
⑤ キウイとフェタチーズのサラダを添える

<キウイのサラダ>(6~8人分)
■材料
・ グリーンキウイ:2個
・ ルッコラ:120g
・ チェリートマト:100g
・ ミントの葉:1/4カップ
・ トーストした松の実:1/4カップ
・ ヤギのフェタチーズ:60g
・ ドレッシング・・・オリーブオイル:1/4カップ、バルサミコ酢:大さじ2、メープルシロップ:小さじ1、ディジョンマスタード:小さじ1
■作り方
① フライパンを中火にかけ、松の実を加えて焼き色がつくまで軽くあぶり、ボウルに移して冷ます
② キウイは皮をむき、スライスまたは、さいの目に切る。チェリートマトは縦半分に切る
③ 大きめのサラダボウルに、キウイ、ルッコラ、チェリートマト、粗く切ったミント、フェタチーズを入れて軽く和える。松の実を散らす
④ ドレッシングのすべての材料を瓶に入れ、シェイクして混ぜ合わせる。出来上がったら、サラダにドレッシングをかける
夕方のオークランド市中心街

▼果実から直接、栄養補給

 キウイを中心に、ニュージーランドをかけ足で取材してきた。キウイに関わる多くの人たち、そのキウイの可能性を探る研究者たち、そのキウイを活用し、おいしく食べるレシピを考える管理栄養士・・・、それぞれの現場で、この小さな果実のキウイに懸ける情熱を感じることができた。

 「家畜を大切に育てるのがニュージーランドスタイルです。ですので、ニワトリを檻(おり)の中で飼育することは2年前に、法律で禁止になりました」とソーンズさんの言葉も印象に残った。できるかぎり自然の中で育て、ストレスがかからないようにする、という配慮があるのだろう。

 日本では最近、栄養補助用のサプリメントをめぐり、健康被害のニュースが大きく取り上げられている。「健康でありたい」という現代人の願いに、サプリメントは手軽に、安価にというニーズに応えている。ただ、自然の中で生み育てられた、多少価格は高くても、豊富な栄養価があるキウイなど果実を食生活に直接、採り入れていくことは大切なことだろう。それが健康への近道になるのではないか、とあらためて今回の取材で実感した。

(おわり)