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女子生徒の理系進学を応援する「Girls Meet STEM College」 D&I財団が24大学と連携

女子中高生の理系進学を応援する取り組みを始めた山田進太郎D&I財団と連携大学の関係者=東京都江東区の芝浦工業大豊洲キャンパス、2024年6月11日

 メルカリの山田進太郎社長が設立し代表を務める「山田進太郎D&I財団」(東京都港区)は6月11日、東京都江東区の芝浦工業大豊洲キャンパスで、理系学部を持つ24大学と連携して、女子中高生の理系学部進学を応援する取り組み「Girls Meet STEM College(ガールズ・ミート・ステム・カレッジ)」を始めた、と発表した。各大学理系学部のキャンパスツアーの発信強化や大学間の交流を促すなどして、諸外国に比べて少ないといわれる理系の女子学生・院生を増やしたい、としている。

 同財団によると、日本では、いわゆる科学・技術・工学・数学の4分野を意味する「STEM(ステム)」(4分野の英語頭文字を合わせた造語)分野への女性の大学進学率は19%(2023年度)で経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中、最低水準という。財団はこの数字を2035年度に28%にする目標を掲げる。

 財団常務理事の石倉秀明さんは「同じ志を持つ大学と連携し、大学のSTEM分野に進学する女子中高生を応援する取り組みを、社会全体のムーブメントにしたい」と話した。

ガールズ・ミート・ステム・カレッジの狙いを説明する石倉秀明さん
 

 主な具体的取り組みは、連携する大学の情報発信の強化や大学間の交流の促進など。情報発信のため、ガールズ・ミート・ステム・カレッジ専用のホームページを開設。各理系学部の授業・研究内容を体験できる各大学の「キャンパスツアー」「研究室ツアー」や理系の女子学生・院生の話を聞くことができる「交流会」など、女子中高生とその保護者が進学検討の参考にできる有益な催事情報をまとめて掲載し、催事参加申し込みも同ページで受け付ける、便利な仕組みを用意した。

 理系進学を検討する女子中高生はスマホを使い各大学の「キャンパスツアー」などの情報を比較、吟味した上で任意の催事に簡単に申し込むことができる。地方在住の女子中高生でも参加しやすいオンライン参加可能な催事情報も積極的に提供する。

 財団は「全国どこでも誰でも多くの大学のSTEM分野に触れる機会、環境をつくりたい。そのためには連携する大学を2025年には100大学に増やしたい」と意気込む。

 大学間の交流促進では、入試で「女子枠」を設けるなど女子学生の入学比率を高める先進事例の知見の共有を目指し、各大学担当者が意見交換できる「勉強会」「交流会」の開催を予定する。

「女性も男性も好きが進路選択の基本」と話す青山学院大の長秀雄・学長補佐
 

 この日の記者会見では、ガールズ・ミート・ステム・カレッジの取り組みに参加する大学の担当者が各自の理系女子学生の比率を高める取り組みなどを紹介した。

 青山学院大の長秀雄・学長補佐は「理系の女性学生複数に理系を選択した理由を質問したら『好き』との単純明快な回答。その上『理系の選択理由に女性と男性で何か違いがありますか』と逆質問された。このことは衝撃だった。私には、理系を選んだ女性には何か特別な選択理由があると考えるアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや偏見)があった」と振り返り、「女性も男性も好きが進路選択の基本である」と強調した。

「女子学生の少なさに危機感を持った」と語る芝浦工業大の磐田朋子副学長
 

 芝浦工業大の磐田朋子副学長は、2018年から同工学部で始めた「女子枠入試」の実施や複数の女子高との「教育連携協定」の締結などで、理系女子学生の比率を高めてきた取り組みを説明。「本学では、イノベーション(技術革新)は多様性の中から生まれる、というキーワードを掲げて男女共同参画を進めてきた。また社会に学び社会に貢献する技術者の育成を建学の精神にしている。しかし男女共同参画の推進に取り組み始めた2013年当時、本学の女子学生の比率は13%程度だった。これで社会のニーズをくみ取り社会に貢献できるのか、と強い危機感を持った」と述べ、現状への危機意識が前向きな取り組みの原動力になった、とした。

日本の理系女子学生の少なさを世界と比較して指摘した東京工業大の桑田薫副学長
 

 東京工業大の桑田薫副学長は、1991年と2022年の同大の「女子学生比率」「女性教員比率」を紹介。女子学生は4.8%から17.1%、女性教員は2.8%から10.6%とそれぞれ30年間で比率は大きく上がったと指摘する一方で、50%近くもある世界の理工系大学の女子学生比率に比べると「日本は水をあけられている。特に学士課程の比率は低い」と解説した。

 その上で「われわれは腹をくくり、批判もあったが2024~25年度入試にかけて、合計143人の女子枠を導入し、一定の成果を得た」と大胆な入試女子枠設定に踏み切った理由を説明した。

理系女子学生増加の取り組みを述べる各大学の担当者
 

 そのほか、ガールズ・ミート・ステム・カレッジの取り組みに参加する岩手大、慶応大、上智大、筑波大、東京薬科大、八戸工業大、横浜国立大の各担当者がそれぞれの女子学生増加の取り組みと抱負を述べた。

 また大阪大、金沢大、熊本大、滋賀県立大、名古屋大、宮崎大、安田女子大、山梨大の各担当者はオンラインで取り組みに期待するメッセージを寄せた。

 このほか、ガールズ・ミート・ステム・カレッジの取り組みには、お茶の水女子大、北九州市立大、佐賀大、信州大、帝京大、東北大も参加している。

 山田進太郎D&I財団はメルカリの山田進太郎社長が「すべての人が好きなことを目指せる社会」の実現を目指して2021年7月設立。これまで、理系の大学進学を目指す女子高・高専1~2年生を対象に年間計500人に、1人10万円の返済不要の「奨学助成金」を支給する活動などに取り組んでいる。