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将棋の海外人気じわり 子どもとアニメが焦点 菅沼栄一郎 ジャーナリスト 連載「よんななエコノミー」

 国際将棋フォーラム2024が昨年11月、7年ぶりに対面で開かれ、第9回「国際将棋トーナメント」には、45カ国・地域から51人の選手が参加した。

 会場となった東京・千駄ヶ谷の新将棋会館などでは、第2回「都市対抗世界子ども将棋団体戦」も開催され、オンラインの予選を勝ち抜いたベラルーシとドイツの決勝戦も行われた。

 行事に協力した「将棋を世界に広める会」の理事長で元外交官の山田彰(やまだ・あきら)さん(67)は「今回の参加者は実力がかなり上がったと実感した」という。子どもたちとは、空港への送迎を含め滞日中の5日間は一緒に過ごし、将棋も手合わせした。「今回は何とか勝ったが次回は危ない」。優勝したベラルーシでは、30人以上がいつも道場で将棋を指しているという。

 大会とは別に子どもたちが練習試合をした両国将棋・囲碁センターには、大人のベラルーシ代表とウクライナ代表も合流した。ロシアのウクライナ侵攻をめぐって複雑な関係にあるが、両者は欧州での交流を通じた「将棋フレンド」だそうで、将棋交流は政治を超えていた。

 「レジャー白書」によれば、日本の将棋人口は460万人(2023年)と推計される。戦後に急増、1982年には2280万人だったが、レジャーの多様化とともに減り98年には1000万人を割った。

 一方で海外では、「広める会」ができた95年当時、欧州の一部の国と米国、中国などで少数の愛棋家が楽しむ程度だった。しかし、2008年から将棋ルールや定跡、歴史などを詳しく解説する英語のユーチューブ動画が多数アップされ、10年末に英語も対応したインターネットの無料将棋対戦サイト「81Dojo」が開設されると一気に広がった。

 山田さんの外交官生活も、将棋と共に始まった。スペイン語の語学研修の最後に、リポート提出を求められた。「政治・経済のテーマではつまらない」と、将棋のルールと戦術をスペイン語で解説した30ページの「将棋入門」を書き上げた。

 決勝戦の後、ベラルーシとドイツの子どもたちは、羽生善治九段、藤井聡太七冠と懇談した。「将棋がもっと強くなるには?」。「これが正解というのはない。自分が好きなやり方を見つけて」と藤井七冠は答えた。

 山田さんは言う。「将棋を世界に広めるには、たくさんの子どもたちに楽しんでもらうこと」。この7月から3回目の「世界子ども将棋団体戦」(北中南米対象)の対局がオンラインで始まる。世界で人気がある日本の漫画やアニメをきっかけに将棋の世界に入る子どもが増えている。それもポイントだ。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.23からの転載】