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「豊臣兄弟!」第23回「さらば半兵衛」唯一無二の魅力で物語を彩った菅田将暉の竹中半兵衛【大河ドラマコラム】

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。6月14日放送の第23回「さらば半兵衛」では、菅田将暉演じる竹中半兵衛が志半ばで無念の最期を迎えた。

(C)NHK

 小寺官兵衛(のちの黒田官兵衛/倉悠貴)が謀反を起こした荒木村重(トータス松本)に囚われ、「官兵衛は村重に寝返った」とうわさを流される。それを聞いた織田信長(小栗旬)が命じた官兵衛の嫡男・松寿丸の処刑を実行しようとする半兵衛と、なんとかそれを阻止しようとする小一郎の駆け引きは見応えがあった。最終的には半兵衛が松寿丸を捕らえるが、小一郎の妻・慶(吉岡里帆)の出産により、生まれてきた赤ん坊を胸に抱いた半兵衛は、「あの子を抱いた手で、子を殺めることなどできぬ」と負けを認め、松寿丸をかくまい、信長には身代わりを差し出すことで決着する。

 「さらば半兵衛」のサブタイトル通り、物語から退場する半兵衛の花道を飾るエピソードで、冷徹な策を講じながらも、人情味あふれた決着に至る展開には、半兵衛の魅力が凝縮されていた。小一郎や秀吉、蜂須賀正勝(高橋努)らに担がれて戦場へ赴き、桜の舞い散る中、息を引き取るラストシーンも印象的だった。

 人の心を読むことにたけた冷徹な策士でありながら、ときには情に流される温かさも併せ持つ。そんな多面的な半兵衛の人間味を、これまで菅田は見事に表現し、唯一無二の魅力を放っていた。「NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 後編」(NHK出版)掲載のインタビューで、菅田は半兵衛を演じる上で心掛けたことについて、「オタク気質な感じをユーモラスに見せられると、小一郎と秀吉兄弟や蜂須賀正勝とのギャップが出て、会話がより楽しくなりそうだなと」と語っているが、その言葉通りの好演だった。

 今回で3度目の大河ドラマ出演となる菅田だが、振り返ってみるとこれまでもほかの登場人物とは異質な唯一無二の存在感で物語を彩ってきた。初出演となった2017年の「おんな城主 直虎」では、柴咲コウ演じる主人公・井伊直虎の後継者として、井伊家再興を目指す井伊直政を熱演。終盤登場すると、数々の苦難を乗り越え、円熟味を増した直虎とは対照的に、努力と愛嬌(あいきょう)で徳川家康に認められ、草履番から“徳川四天王”の一角に上り詰めていく血気盛んな直政を熱演し、最終盤の主役とも言える活躍で物語を締めくくった。

 二度目の出演となった「鎌倉殿の13人」(22)で演じたのは源義経。平家打倒の立役者でありながら、慕っていた兄・頼朝から追われることとなった「悲劇のヒーロー」義経を、“戦しか知らない若者”として巧みに演じた。ひきょうな手段を躊躇(ちゅうちょ)なく用いて平家を打ち破る一方、母を早くに亡くし、兄・頼朝の妻・政子の膝枕で甘える愛嬌も見せる義経は斬新だった。宿敵・平家を滅ぼした後、目標を失った義経が「この先、私は誰と戦えばよいのか」と海岸で立ち尽くす姿も印象的だった。

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 目標に向かって突き進む熱気と冷静さ、そして愛嬌あふれる人間味。これらを絶妙なバランスでミックスし、キャラクターを際立たせるのが、菅田の持ち味と言えるかもしれない。こうして振り返ってみると、本作の竹中半兵衛も、まさにその延長線上にあることがよくわかる。本作でも、思慮深さと本心の読めない底知れなさが半兵衛を際立たせると共に、農民出身で真っすぐな人柄の小一郎と底抜けに明るい秀吉兄弟の輪郭もくっきりと浮かび上がらせていた。人間味についても、この回の赤ん坊を抱いて涙を流す場面のほか、宴席で藤堂高虎に胡坐状態で担がれる場面(第18回)や、初対面の官兵衛をにらんだときの“変顔”(第21回)などで発揮し、単なる“軍師”という肩書に収まらない人間的な深みを醸し出していた。

 番組公式サイトでは、半兵衛の登場シーンをまとめた動画も公開されており、その人気のほどがうかがえる。菅田は前述の「NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 後編」のインタビューで「親友の仲野太賀が主演の大河ドラマと聞いたとき、そこに自分もいる景色が自然と想像できました。現実になってうれしいです」と出演の喜びを語っているが、最後に半兵衛と小一郎の駆け引きを描いたこの回は、2人に向けた心憎い趣向だった。そしていずれは、菅田が大河ドラマの主演を務める日もきっと訪れるはずだ。そう遠くない将来、その日が来ることを期待しつつ、まずは「豊臣兄弟!」の今後の展開をしっかりと見守っていきたいと思う。

(井上健一)

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