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農業現場を支える〝農業特化型〟生成AI 連載「グリーン&ブルー」前田佳栄 日本総合研究所リサーチ・コンサルティング

 この数年で生成AIは急速に進化し、ビジネスに欠かせないものになっている。業務の効率化のため、多くの企業で、資料や議事録の作成、社内規定の検索などに活用されている。また、小売業、金融業、不動産業などでは、電話やチャットボットでの顧客対応に生成AIを活用することで、顧客満足度の向上に繋げている例もある。

 そのような中、農業分野においても生成AIの活用が広まりつつあり、例えば事業計画の作成や広告宣伝などに活用する人が出ている。事業計画の作成では、栽培する品目や面積、販売先などの現状に加え、目標や必要資金などを入力することで、計画の骨子を作成できる。また、ECなどで農産物を販売する際には、農産物の特徴や生産のこだわりを基に、消費者に刺さる紹介文を作成することも可能である。

 ただ、活用場面によっては注意が必要であり、特に栽培技術に関しては、慎重に使うべきである。ChatGPTやGeminiなどの一般的な生成AIに栽培に関する専門的な質問をすると、一見正しそうに見えるが、実は適切ではない対処方法を提案されることがある。一般的な生成AIは農業技術に関する専門知識を備えているわけではないため、地域や品目、気候などに合わない対処方法を示すことがあるからだ。知識を持たない人がそのまま情報をうのみにしてしまうと、大失敗してしまうリスクさえある。

 こうした弱点を補うのが、農業技術に関する専門知識を学習した〝農業特化型〟の生成AIである。大規模な研究プロジェクトとしては、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が中心となり、内閣府のプログラムを活用して農業用生成AIの開発を進めてきた。研究では、農研機構や地域の農業試験場などが保有している栽培マニュアルや栽培暦などを基に、品種ごとの特性や、地域の土壌や気象条件に応じた栽培方法の違いなどの緻密なデータを大量に学習させることで、質問に対する正答率を向上させた。

 研究だけでなく、実際にサービスとしてリリースされる事例も出てきた。東京大学発AIスタートアップの「きゅうりトマトなすび社」が提供する栽培アシストAIは、地域・品目ごとの特徴とマニュアルを学習した生成AIが農業に関する質問に24時間365日回答してくれるサービスだ。

 日本総研でも株式会社JSOLとともに、農業AIエージェントサービス「Vーfarmers(R)」の実証を行っている。Vーfarmersは農業法人などが保有する独自のマニュアルを読み込むことができるほか、日々の作業の中での気付きや先輩からのアドバイスなどを基に更新していくことも可能である。作業に不慣れなパート・アルバイトや外国人労働者なども、スマホ一つで早期に戦力として働いてもらえる。農業特化型生成AIは単なる作業支援にとどまらず、技術継承の基盤にもなりうる。近い将来、こうしたサービスが、農業技術の普及をサポートする力強いパートナーとなる。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.24からの転載】


前田佳栄(まえだ・よしえ) 富山県の兼業農家で育ち、現場感覚を踏まえた新規ビジネスアイデアの検討、コンサルティング、政策提言などを行う。2017年東京大大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻修了(16年度同科修士課程総代)。現在、日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門食農イノベーショングループ所属