SDGsが社会の共通目標となるなか、印刷業界は2006年に「グリーンプリンティング(GP)認定制度」を創設。いち早く地球環境への負荷低減に取り組んできた。この認定制度は、環境に配慮した自主基準に基づき、基準を達成した工場・事業所を認定するとともに、同基準に適合した印刷製品への「GPマーク」表示、並びに印刷工場が使用する資機材の認定などを行うもの。
業界を取りまとめる一般社団法人 日本印刷産業連合会(東京、通称「日印産連」)は毎年、このGP認定制度に対する深い理解と同制度の積極的な活用が認められる企業や団体に、「GP環境大賞」「GPマーク普及大賞」「GP資機材環境大賞」を授与しており、2023年度の表彰式が、10月18日に都内で行われた。
表彰式の冒頭、日印産連の堆誠一郎(あくつ・せいいちろう)副会長が、「GP認定工場への印刷物発注は、サプライチェーン全体を通じたSDGsの目標達成に寄与すると確信している。私たち日印産連はこうした取り組みによって地球環境への負荷低減をさらに推進していく」とあいさつ。
続いて行われた表彰式では、最初に「GP環境大賞」の〈一般印刷の部〉で受賞した3社(東武鉄道株式会社、日本航空株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)と、〈パッケージ印刷の部〉で受賞した株式会社あわしま堂の代表者が登壇。プレゼンターのグリーンプリンティングPR大使・小山薫堂氏から賞状が手渡された。続いて、大賞に準じる「GP環境準大賞」を受賞した7社と「GP環境大賞特別賞」1社も表彰された。なお、「GP環境大賞」を3回受賞した企業・団体に贈られる「GP環境大賞ゴールドプライズ」は今年度は該当なしだった。
GP認定工場の中でGPマークの普及に貢献した会社を表彰する「GPマーク普及大賞」は、株式会社笠間製本印刷、株式会社文伸、丸正印刷株式会社、株式会社北四国グラビア印刷、TADクロスメディア株式会社の5社に、大賞に準じる「GPマーク普及準大賞」は7社に贈られた。また、今年度から、「GPマーク普及大賞」を過去3回以上受賞した会社に「GPマーク普及大賞ゴールドプライズ」が贈られることとなり、六三(むつみ)印刷株式会社とNTT印刷株式会社がその栄誉に輝いた。「GPマーク普及大賞特別賞」は該当なしだった。
さらに、GP資機材認定製品を積極的に提供し、印刷工場の環境負荷低減及び作業環境改善に貢献している資機材メーカーに贈る「GP資機材環境大賞」は、〈資材部門〉のウエノ株式会社と、〈機材部門〉の株式会社が受賞した。
賞状の授与と記念撮影が終わると、受賞者を代表して3人が登壇し、代表謝辞を述べた。
日本航空(株)商品・サービス開発部の岩本正治部長は、「航空業界でも環境に配慮したさまざまな取り組みが始まっている。航空燃料に持続可能な代替物を使用したり、機内で使用する資材も脱プラスチックだったり。機内食メニューの印刷物はすでにGP認定を受けたが、今回の賞はもっとしっかりやりなさいという激励の賞だと思っている。今後の宿題は機内誌の印刷にGP認定をいただくこと。飛行機に乗った際には宿題が済んだかどうか機内誌を見てGPマークを探していただきたい」と自信をのぞかせる。
六三(むつみ)印刷代表取締役社長の島村信彦氏は「GP認定制度が始まった当初は、他社と差別化できる業務発展の道具としか考えていなかった。しかし、環境にうるさい顧客がGPマークの価値を認めたり、社会に貢献するGP認定製品を印刷することで社員が仕事に誇りと自信を深め一体感を持ったりしている。GPを知れば知るほど考え方が変わり、今は商売抜きで純粋にGPを世の中に広めていきたいと思っている」と決意を述べる。
冨士フイルムグラフィックソリューションズ(株)代表取締役社長の山田周一郎氏は「冨士フイルムグループは提供する製品の開発から廃棄までのサイクルすべてを対象としてCO²削減や資源の再活用に取り組んでいる。印刷の資材関連では薬品を使わず工程を減らし生産現場の環境負荷を減らす貢献をし、機材部門ではデジタルプリンティングを活用して資源ロスをできるだけ減らす製品やサービスを提供していきたい」と力強く語った。
表彰式の最後に、2016年からグリーンプリンティングPR大使を務める、放送作家・脚本家の小山薫堂氏が登壇し、次のように式を締めくくった。
「PR大使になって7年目。最初の頃は恐縮しつつやっていたが、年を重ねるごとに印刷業界の仕組みや携わる方々の思いがわかってきた。世の中の注目をどれだけ集めるか、どれだけ話題になるかでうねりが作られていく。今年は自分がパーソナリティーを務めるラジオ番組でグリーンプリンティングのことを取り上げた。果たしてリスナーが印刷のことに興味を持ってくれるかと危惧したが、思っていた以上に大きな反響があった。一般の人たちも改めて考えてもらうことで印刷が尊い産業だと感じてくれた。『GP環境大賞』は(印刷物を発注する)クライアントとそれを提供している事業者と、その事業者に資機材を提供しているみなさんがそろって、その3者、3つの立場を同時に表彰し、環境を考える稀有(けう)な賞。印刷を軸にして人々が心を一つにする、本当に価値がある賞だと思う」
表彰式終了後は、小山薫堂氏がゲストと楽しい対話を繰り広げる、恒例の「印刷と私」トークショーが行われた。今年は、ゲストに迎えた雑誌『デザインのひきだし』の津田淳子編集長が、雑誌製作時の驚きの裏話を次々と披露。尋常ならざる、印刷・紙・加工へのこだわりと愛情に、印刷業界の人々もたじたじとなりながらもうれしそうな表情を見せていた。
■2023年受賞企業・団体一覧
【GP環境大賞】
2023GP環境大賞ゴールドプライズ(本年度は該当なし)
<一般印刷の部>
2023GP環境大賞
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、東武鉄道株式会社、日本航空株式会社
2023GP環境準大賞
社会福祉法人恩賜財団済生会、株式会社ジェイアール東日本企画、全国間税会総連合会、 株式会社ポスティングセンター沖縄、HOYA株式会社 アイケアカンパニー
<パッケージ印刷の部>
2023GP環境大賞
株式会社あわしま堂
2023GP環境準大賞
国分グループ本社株式会社、竹下製菓株式会社
2023GP環境大賞特別賞
プレミアアンチエイジング株式会社
【GPマーク普及大賞】
2023GPマーク普及大賞ゴールドプライズ
NTT印刷株式会社、六三印刷株式会社
<オフセット印刷部門>
2023GPマーク普及大賞
株式会社笠間製本印刷、株式会社文伸、丸正印刷株式会社
2023GPマーク普及準大賞
あさひ高速印刷株式会社、伊藤印刷株式会社、岩岡印刷工業株式会社、
株式会社大川印刷、精英堂印刷株式会社、株式会社太陽堂印刷所
<グラビア・シール・スクリーン印刷部門>
2023GPマーク普及大賞
株式会社北四国グラビア印刷
2023GPマーク普及準大賞
株式会社巧芸社
<製本・表面加工部門>
2023GPマーク普及大賞
TAD クロスメディア株式会社
2023GPマーク普及大賞特別賞(本年度は該当なし)
【GP資機材環境大賞】
<資材部門>
2023GP資機材環境大賞
ウエノ株式会社
<機材部門>
2023GP資機材環境大賞
富士フイルム株式会社