『M3GAN/ミーガン』(6月9日公開)
玩具会社の研究員ジェマ(アリソン・ウィリアムズ)は、人間のようなAI人形「M3GAN(ミーガン)」を開発していた。そんな中、交通事故で両親を亡くしためいのケイディ(バイオレット・マッグロウ)を引き取ることになる。
ジェマは、子どもにとっては最高の友だち、そして親にとっては最大の協力者となるようプログラミングしたミーガンを完成させ、ケイディの世話を任せるが…。
本来は子どもを守るために作られたAI人形が引き起こす惨劇を描いたサイコスリラー。「ソウ」シリーズのジェームズ・ワンと「パージ」シリーズのジェイソン・ブラムが製作し、『マリグナント 狂暴な悪夢』(21)のアケラ・クーパーが脚本を担当。監督はニュージーランド出身のジェラルド・ジョンストン。
この映画は、最近、何かと話題のAIが引き起こす反乱や恐怖を描いているが、ミーガンの開発者であるが故に窮地に陥るジェマは、フランケンシュタイン博士、あるいは『ピノキオ』のゼペット、『鉄腕アトム』の天馬博士的な役割で、目新しさはない。
イメージとしては、『ターミネーター』+『チャイルド・プレイ』(チャッキー)、あるいは『死霊館』シリーズ(アナベル)といった感じだが、ジョンストン監督は、『ポルターガイスト』(82)のピエロ人形を参考にし、『ゆりかごを揺らす手』(91)や『ゴーン・ガール』(14)のような、アンチヒーローのファムファタールを描いたダークコメディー的な犯罪サスペンスの線を狙ったのだという。また、ミーガンのキャラクターには『オーメン』(76)の反キリスト的なものが反映されているらしい。
ホラーとコメディーは紙一重だと感じることが多いが、この映画は、少女人形が殺人人形と化す恐怖の端々に、ひねりの効いたダークユーモアを絡ませており、両者のバランスの良さが映画全体を面白くしていると感じた。
(田中雄二)