カメレオン俳優ならぬ、カメレオンアイドルと呼びたいグループがあります。女性10人組の「私立恵比寿中学」、通称「エビ中」です。
変幻自在ぶりが大きな魅力のエビ中に、楽曲を提供しているアーティストの名前を、一部ですが挙げてみます。石崎ひゅーいさん、岡崎体育さん、「クリープハイプ」の尾崎世界観さん、「フジファブリック」の加藤慎一さん、川谷絵音さん、キタニタツヤさん、宮藤官九郎さん(作詞)、元「JUDY AND MARY」のTAKUYAさん、「マカロニえんぴつ」のはっとりさん、ビッケブランカさん・・・。こんなにも色が異なる皆さんの曲を歌いこなす表現力が、エビ中にはあって、楽曲提供した方々から絶賛されています。
結成は2009年、メジャーデビューは12年。コンセプトは「永遠に中学生」です。恵比寿中学というのは架空の学校で、所属事務所が在る恵比寿に由来しています。メンバーは結成時からいらっしゃる真山りかさんを筆頭に、14~9年のキャリアがある20代の5人と、近年加入した10代の5人です。
14年にわたる活動の間には、悲しい別れもありました。また、メンバーの転入、転校、卒業はかなり目まぐるしくありました。人数が一定しないということは、ダンスでの個々の担当パートや、全体のフォーメーションを、その都度、考え直さなければいけません。ですが、エビ中は何度メンバーが変わっても、パフォーマンスの質がブレません。
一発撮りが見られるユーチューブチャンネル「THE FIRST TAKE」で、21年に「なないろ」(池田貴史〈レキシ〉さん作詞作曲)を歌ったパフォーマンスを見ていただければ、エビ中の魅力が伝わるはずです。この収録は、安本彩花さんが大病を克服してメディア復帰というタイミングでした。冒頭、みんなが笑顔で見つめ合い、安本さんに「お帰り」と優しく声をかけます。そして歌う姿の幸せそうなこと・・・。動画のコメント欄には、初めてエビ中を見た人からも「涙が止まらなかった」といった声が並びました。
エビ中は、段違いの試練を乗り越えてきたので、人の痛みが分かるでしょうし、引き出しが多い。多彩な楽曲にも適応できる。真山さんは私が担当している朝のラジオ番組に何度か出演してくださっていて、アイドルであることや音楽にとても誠実な方です。そういう人が支えて、全員が一緒に歌える幸せをかみしめて、聴き手に届けようと真っすぐなパフォーマンスをする。エビ中は、一番苦労しているけれど、一番幸せなアイドルだと思います。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 45からの転載】
山崎あみ(やまざき・あみ)/1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。interfm「MUSIClock」(略称みゅじろく。月―木曜午前7時~8時55分)メインDJ。ポッドキャスト番組「山崎あみ『うるおう』リコメンド」(うるりこ。金土曜更新。共同通信社制作)出演中。