エンタメ

「ホラー映画ってこんなに疲れるんだと実感しました」「分からないことを楽しんでもらえたら」古川琴音、下津優太監督『みなに幸あれ』【インタビュー】

ーホラーとコメディーは紙一重というか、表裏一体なところがありますが、この映画でも、怖いけれどもおかしいというところが多々ありましたね。

下津 恐怖とお笑いは対局にあって、その間がシュールだと思います。今回はまさにそのシュールをちょっと狙っていった感じです。なので、こっちのお客さんはちょっと怖がりながら見ているけど、こっちのお客さんは笑っている。そういうのがいいのかなと思います。

ー古川さんは演じながら、思わず笑ってしまったことはありましたか。

古川 演じながらはありませんでしたが、完成作を見てすごく笑いました。こんなふうになっているんだと。こんなに笑うとは思わなかったです。

ー監督の演出はいかがでしたか。

古川 分からないことを聞いた時に、「分からないまま演じてください」と言われたのが印象に残っています。最初の撮影の頃だったんですけど、私の役柄のこともあって、「その疑問を持ったまま、それをそのまま出してほしい」と言われたので、基本はすごく自由にさせていただきました。でも、特徴的だなと思ったのが、シチュエーションを作るということ。その中で、自由に演技をさせるというか、ちょっとドキュメンタリーっぽく撮られているのかなと思いました。例えば、おばさんの家に行った時に、幕があって、その幕を下ろした先に何があるのかというのは本番まで言われていなくて。実際に本番を撮った時の自分の反応として、それが何かを認識するよりも先に叫び声が出たんです。それは自分の想像を超えたお芝居で、ドキュメンタリー的だったのかもしれません。本当に驚きました。だから、ちゃんと怖がれる環境を演出してくださる方だなと思いました。あの時は、本当に吐きそうなぐらい怖かったんです。

ー実際に自分が演じた完成作を見てみて、どんな印象でした。

古川 やっぱり気持ち悪いというか、変なところを触られているような感覚。27歳になって、こういう新しい感情を感じることってまだあったんだなと思いました。何じゃこの気持ちはみたいな(笑)。

ー最後に、これから映画を見る方に向けて一言ずつお願いします。

下津 新たな感覚というか、(総合プロデュースの)清水崇監督に「ニュージャンルホラー」と言っていただいたんですけれども、新たなホラー映画ができたのかなと思いますので、その感覚を楽しんでいただければと。

古川 見ていただいた後に「このシーンってこうなんじゃないかな」とか、見てくださった人の数だけ、いろいろと感想が浮かぶ作品だと思うので、ぜひ、お友達やご家族と一緒に見ていただけたらうれしいなと思います。

ー確かにいろいろな説明が省かれている分、想像させられるところがありますね。

下津 最近の邦画は、1から10まで小学生にも分かるようなストーリーが多いので、余白というか、考えさせる余白があってもいいんじゃないかなということですね。

ー古川さんは、最初は監督にいろいろと聞いたけど、途中で聞くのをやめたんですね。

古川 だからお客さんにもそうであってほしいです。分からないことを楽しんでもらえたらと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

 

(C)2023「みなに幸あれ」製作委員会