-お稽古も進んでいると聞きます。稽古場の雰囲気はいかがですか。
すばらしい俳優さんばかりで、皆さん、思いの丈を芝居に込めてぶつけていらっしゃることを感じるので、私ももっともっと大胆に挑戦しなければと感じています。
-主演の草なぎ剛さんの印象は?
ずっと遠くから拝見していた方ですので、まずこれほど近くでお芝居を浴びられることが感激です。シェークスピアの言葉って、下手するとただ言葉の羅列になってしまう恐れがあると私は感じていますが、草なぎさんのせりふは、一言一言が胸に染み込んできて、どうやったらこんなお芝居ができるんだろうと、毎日、勉強させていただけるのが喜びでもあります。
-ところで2024年は舞台「千と千尋の神隠し」など忙しい1年だったと思います。改めて2024年を振り返って、どんな1年でしたか。
ありがたいことにひたすら「千と千尋の神隠し」に没頭させていただけた1年でした。1月からお稽古が始まって、8月まで公演させていただいていましたので。
-「千と千尋の神隠し」ではロンドン公演もありましたね。
日本文化や「千と千尋の神隠し」という物語が愛されていることを肌で感じて、とてもありがたい経験をさせていただいたと思います。やっぱり、数日間、旅行に行くだけでは感じられない、実際に自分が現地で働いたからこそ感じる、演劇のあり方を感じることができました。ウエストエンドという歴史のある演劇の街で、そうしたことを身をもって体感させていただけたのは、すごく大きな出来事だったと思います。
-どんなところに日本とロンドンの違いを感じましたか。
ロンドンではより演劇が身近にあるものなのだなと思いました。日本だとやっぱり敷居が高いと感じる方にとっては手が出しづらいものなのだと思いますが、ロンドンではもっと生活に溶け込んでいるように思います。どちらが良い悪いではなく、それは演劇の歴史の違いだと思います。劇場がロンドンの人たちの中に自然と存在していることに一種のカルチャーショックを受けて、いい意味で、こんなにも身近でいいんだなと思いました。それは、お客さまとの距離もそうですし、自分の生活との距離もそうです。それから、日常からとても豊かに感情表現をされるので、裏方で働いているスタッフさんもずっと歌ってらっしゃったり、踊ってらっしゃったり。そういう光景は日本では見られないので、心からこの仕事やこの舞台を楽しんでいるんだなと感じました。そうした方と一緒に仕事ができて、そして、本当に舞台を楽しみに待ってくださっている方に届けられたというのは、今後の励みにもなると思います。
-2025年の目標は?
まずはこの作品です。怖がらずに、いけるところまで挑戦していきたいなと思います。守りに入らず、森さんの演出や松岡さんが訳されたシェークスピアの言葉、そして共演者の皆さまとのお芝居といったものの力を全て借りて、挑戦していけたらなと思っています。そして、2025年も、たくさん人の影響を受けて、変化を恐れない年にできたらと思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
舞台「ヴェニスの商人」は、12月6日~22日に都内・日本青年館ホールほか、京都、愛知で上演。