-鈴木さんと有村さんの印象は?
僕が台本を読んで、頑張って150パーセント理解できたと思っても、多分僕より人生を長く生きてきた人からしたら、50パーセントぐらいの理解度なんだろうなとは何となく思っていました。演じる自分としてはもっと理解したいなと。だから、亮平さんや有村さんは台本をどういう感覚で読んでいるのかがすごく気になりました。お二人のお芝居を見てすごいなとなった中で、何が見えているのだろうと思ったし、現場に入ってお芝居をする時の空気感とかも含めて、自分もこうありたいと思う俳優さんがまさにこのお二人でした。僕はもっと年を重ねてからこの映画を改めて見たいと思ったし、台本をもう1度読みたいと思ったんです。それはネガティブな意味ではなくて、人生のいろんな経験を経てから見たり読んだりすると、絶対に受け取るものが変わるし、見えるものも変わる作品だと思ったからです。だからこそ今の自分にできる限りのことを振り絞って演じようと思いました。
-前田監督とは『ロストケア』以来の仕事でしたが、今回学んだことは何かありましたか。
監督の演出をどう受け取るかということを学びました。例えば、僕は今まで監督から「楽しそうに」と言われたら、そこだけを意識してやっていたけど、そうではなくて、「何でこの役がここで楽しい気持ちになるのか、重い気持ちになるのかの理由を考える」というのを聞いてすごいなと思いました。それから、「演じる人は役を内側から捉える。見ている人は外側から捉える。内側をどう出すかは、自分の中に流れているものを持ってやってみたらいい」ということを教えてもらったのは、すごくいい学びでした。
-この映画の注目ポイントを。
やっぱり俊樹さん=亮平さんの結婚式でのスピーチのシーンですね。結婚式に新郎として出るという、自分が実際には経験したことがない状況の中で、亮平さんのスピーチを聞きながら、その言葉がすごく胸に来ました。刺さったというよりも、送られてきたこの言葉を抱きしめたいと思いました。そうやっていろいろな言葉を受け取りながら、この先の人生を考えるとすごく感動しました。
-完成作を見た印象は?
素晴らしかったです。自分が出た作品なのに良過ぎて、何回泣いただろうというぐらい泣きました。自分が撮影したところは分かっているけど、見ていないところもあったので、映像になって新しい発見もありました。見て思ったのは、僕が脚本を読んだ時は、フミちゃんと太郎さんの側で読んでいたんだなということ。でも繁田さんの家族の姿を見ると、そちらの側でも僕は泣いちゃったし、何かいろんなところで絡み合っていたんだ、そこがいいなと思いました。特に酒向さんのお芝居がすごかったから、これはいい作品だなと。この作品に携われてよかったと思うし、これは絶対に見てほしいと自分から思えた作品なので、できるだけたくさんの方に見てほしいです。個人的には、お芝居について、新しい視点が生まれた作品でもあるし、自分の人生について考えた作品でもありました。また、家族はずっと身近にいてくれたけど、これからはもっと大切にしなければ、ちゃんと言葉にして伝えようと思いました。それに、自分が結婚するとなったら、結婚式の前夜にこの映画が見たいと思いました。
(取材・文・写真/田中雄二)
