企業法務に求められる役割が拡大・多様化している中、人材不足が年々深刻化しているという。「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る」を理念とする「LegalOn Technologies」(リーガルオンテクノロジーズ、東京)は、弁護士の法務知見と自然言語処理技術や機械学習などのテクノロジーを組み合わせ、契約業務の質の向上、効率化を実現するソフトウェアを開発・提供している。同社が4月9日に東京都内で、「LegalOn Technologies 新プロダクト発表会」を開催した。
まず、同社代表取締役 執行役員・CEOで弁護士の角田望氏が、これまでの LegalOn Technologiesの事業の振り返り、今後の成長戦略、業務提携について発表した。
2017年に創業し、「リーガル(法務)×AI」で事業に取り組む同社には、10人超の弁護士が在籍。世界のリーガル企業の中でも有数の約180億円の資金調達をし、同社サービスを導入する企業は延べ5000社以上に上るという。2018年に、当初まだ一般的ではなかった「AIを利用して契約書をレビュー(評価)する」という概念を、契約審査の品質向上と効率化を実現する「AI契約審査プラットフォーム LegalForce」によって提供。2020年には、契約締結後の適切な契約管理(コントラクトマネジメント)をサポートする「AI契約管理システム LegalForceキャビネ」の提供を開始した。2023年4月には、米国に子会社「LegalOn Technologies, Inc.」を置き、グローバルな事業展開をスタートした。
このように、契約業務を中心に進化を遂げてきたが、企業法務業務全般にワンストップで対応できるサービスは、これまでなかったという。そこで同社が4月15日に提供を開始するのが、法務全般の業務を1つのクラウド上で行うことができる「統合法務プラットフォーム LegalOn Cloud」だ。
リーガルオンテクノロジーズ 執行役員・CPOの谷口昌仁氏によると、「電子契約」「リーガルリサーチ」「契約書AI審査」「契約書作成・管理」といった同社のサービスを導入している法務組織は多い。一方で、依然として「業務の効率化・時間短縮」「人手不足の解消」「属人化の解消」などが、抱える課題の上位に入っている(LegalOn Technologies「企業の契約書、法律相談に関する実態調査」2024)。谷口氏は、法務組織が対応する業務が広範囲であること、知識や関連情報が広範囲に分散しひも付けて整理することが難しいこと、業務上の論点を洗い出すために求められる前提知識が膨大であることなどが根底にあると指摘している。
これらの課題を、「案件管理」「契約書作成・審査」「稟議(りんぎ)」「契約締結」「契約書管理」といったさまざまなサービスとデータを1つのプロダクトに搭載した「LegalOn Cloud」で解決する。第一段階として夏ごろまでに、契約書の作成・審査・管理、法務相談への回答に関する業務のサポートサービスを順次提供。第二段階として、書籍・法令・ガイドライン等の調査ができる機能を導入、その後もさまざまな機能を追加する予定だ。企業法務の業務を効率化し、法務が主導となって企業の成長を後押しする“攻めの法務”の実現をサポートしていく。
また、リーガルオンテクノロジーズと「森・濱田松本法律事務所」(東京)との業務提携も発表された。同事務所は、個々の弁護士の経験・知識をベースに、さまざまな組織に出向したり、官公庁で立法に携わったり、世界各地の弁護士とも提携している。
同事務所・パートナー弁護士の飯田耕一郎氏は「自然科学と違い人間の価値判断が必ず入ってくることから、法律業界全般が、テクノロジーの活用という点では最も遅れていた。しかし、弁護士たちが大量の本や資料などの紙をめくり、明け方まで働くことで競争力を生み出してきた時代から、近年、情報収集・探索の部分が、テクノロジーの導入により劇的に早く正確になっている。生成AIについては、情報を収集したその先の思考や、思考の結果を表現するアウトプットの面まで進出してきている」と語った。さらに、「当事務所から独立した角田弁護士が作ったリーガルオンテクノロジーズの発展の過程をつぶさに見てきた。この提携により、われわれが培ってきた弁護士たちという人間の力量と、リーガルオンテクノロジーズのデジタル化した情報の強さをかけ合わせて、より競争力を高め、優れた法律サービスを作っていきたい」と抱負を語った。
【記者会見の様子】
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