カルチャー

「人はなぜ戦争を選ぶのか」 2500年変わらない原理をさぐる

今こそ読みたい、驚くほど普遍的な「最古の戦争史」
今こそ読みたい、驚くほど普遍的な「最古の戦争史」

 人が戦争に導かれる原理とは? ――最古の戦争史から、今も変わらない本質を読み解く『人はなぜ戦争を選ぶのか』(文響社・東京)が刊行された。古代ギリシアの代表的歴史家・トゥキュディデス の『戦史』から6つの重要箇所を、親しみやすい日本語へ新訳した。

 紀元前460年、ギリシア文明を崩壊させるほど甚大な被害をもたらした「ペロポネソス戦争」。その戦争を記録した『戦史』は、人類最古の歴史書の一つといわれている。描かれるのは、人々を戦争に導く指導者たちの演説や、無謀な作戦にもかかわらず熱狂していってしまう市民たち。そして当然のように侵攻する強国と、それに抵抗する国々。登場する人物たちの言動は、2500年前のものとは思えないものばかりで、その普遍性ゆえに、『戦史』は地政学や政治学の基礎教養となっている。

民衆の前で戦争の必要性を説く古代ギリシアの指導者
民衆の前で戦争の必要性を説く古代ギリシアの指導者

 序章「ペロポネソス戦争と『戦史』」に続き6章での構成。内容は、「第1章 指導者はどのようにして戦争を正当化するか?」「第2章 国のために命をかけることをどう捉えるか?」「第3章 戦争の責任は誰にあるのか?」「第4章 正義を貫くべきか? 目の前の実利をとるべきか?」「第5章 強国が侵攻してきたとき、抵抗するか? 降伏するか?」「第6章 敗色濃厚な作戦に対し、なぜ逆に熱狂してしまうのか?」。巻末にノンフィクション作家・予備校講師・歴史系YouTuberである茂木誠氏の解説を加えた。同書を読むと、歴史的に最も典型的とされる「戦争が始まる経緯」や、国民・指導者がたどる感情の変遷も見えてくる。

 ウクライナ危機や、今後起きうる国家間の対立にも当てはまる、「人が戦争に向かう原理」。戦争が他人ごとではない今こそ読みたい、色あせない古典だ。価格は税別1,280円。