カルチャー

北澤美術館で企画展「エミール・ガレ、自然への眼差し」 草花や昆虫などをデザインに取り入れたガラス工芸家

エミール・ガレ 《ひとよ茸ランプ 》 1904年頃 北澤美術館
エミール・ガレ 《ひとよ茸ランプ 》 1904年頃 北澤美術館

 草花や昆虫など自然のモチーフをデザインに取り入れて、今日「アール・ヌーボー」として知られる新しい時代様式を生み出した、フランスのガラス工芸家、エミール・ガレの世界をのぞいてはみませんか?

 北澤美術館 (長野県諏訪市湖岸通り1-13-28)は、開館40周年を記念しての企画展「エミール・ガレ、自然への眼差し ―我が根は森の奥深くにあり―」を3月18日(土)から2024年3月12日(火)まで開催する。

 ガレが求めたものは、単なる植物や昆虫の写しではなく、生命の躍動を伝える表現だった。本展では、自然に注がれたガレの熱い思いを探る。

エミール・ガレ 《花瓶「あざみ」》 1900年(年記)1900年パリ万国博覧会出品作 北澤美術館
エミール・ガレ 《花瓶「あざみ」》 1900年(年記)1900年パリ万国博覧会出品作 北澤美術館

 ガレは19世紀末の工芸改革運動アール・ヌーボーの創始者の一人。1846年、フランス東北部ロレーヌ地方生まれ。高級ガラスと陶器の企画販売を営む父親の跡取りとして工芸家になる。陶器、ガラス製品に植物や昆虫など自然の意匠を取り入れた新機軸を打ち出した。1885年頃からは、寄せ木細工の高級家具も手掛け始めた。

 詩文を刻んだ「もの言うガラス」など芸術性豊かな製品も制作、1889年と1900年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞した。植物学者としての顔もあったガレ。1904年、58歳で病没。家族が経営を引き継いだガレ社は、1931年まで製品を世に送り続けた。

エミール・ガレ 《脚付杯「けし」 》1900年(年記)1900年パリ万国博覧会出品作 北澤美術館
エミール・ガレ 《脚付杯「けし」 》1900年(年記)1900年パリ万国博覧会出品作 北澤美術館

 開館時間は10月から3月までが午前9時から午後5時まで(初日3月18日の一般公開は午後1時以降)。4月から9月までは午前9時から午後6時まで。入館料は大人1000円、中学生500円。会期中の休館日は9月30日(土)。問い合わせは電話0266-58-6000。

 さらに、北澤美術館主席学芸員の池田まゆみさんによる講演「エミール・ガレ、科学の眼と詩人の心」が5月27日(土)午後2時から3時まで開かれる。

 9月16日(土)の午後1時から1時間、「きのこを通して見るガレ」と題して、きのこ愛好家のとよ田キノ子さんがトークショーを開く。どちらのイベントも無料、要入館券。

 さらに、北澤美術館は九州国立博物館(福岡県太宰府市石坂4-7-2)にガレとドーム兄弟の作品を貸し出す。特別展「アール・ヌーヴォーのガラス ガレとドームの自然賛歌」が4月18日(火)から6月11日(日)まで開かれる。

 開館時間は日曜日・火曜日~木曜日が午前9時半から午後5時まで。金曜日・土曜日は午後8時まで。休館日は月曜日(ただし、5月1日は開館)。観覧料は一般1700円、高校生・大学生1000円、小学生・中学生600円。

 関連イベントとして、5月13日(土)の午後2時から3時半まで北澤美術館主席学芸員の池田まゆみさんによる講演会「北澤美術館のガラスコレクション」が開かれる。聴講無料。事前申込締め切りは4月26日(水)必着。

エミール・ガレ 《蘭文八角扁壺=らんもんはっかくへんこ《親愛》》 1900年(年記)1900年パリ万国博覧会出品モデル 北澤美術館
エミール・ガレ 《蘭文八角扁壺=らんもんはっかくへんこ《親愛》》 1900年(年記)1900年パリ万国博覧会出品モデル 北澤美術館

 ガレと同じ都市ナンシーのガラス工場を経営するアール・ヌーボーのガラス工芸家兄弟ドーム。父は、普仏戦争の敗北の後、ナンシーに逃れてガラス工場の経営者となった。兄弟はガレの活躍にあこがれ、1891年より高級工芸ガラスの分野に進出。

 1900年パリ万国博覧会ではガレと同時にガラス部門のグランプリを受賞するなど、ガレの競争相手に成長する。ドーム社では、兄オーギュストが経営に専念し、弟アントナンが美術監督となり、優れたスタッフの力を束ねた。