
年齢が上がるにつれて低下していく運動機能。できるだけ長く元気な身体能力を維持するために気を付けねばならないことは多い。千葉大学(千葉市)の研究グループは、3万人超の健康診断のデータを分析。運動器の障害で移動のための能力が低下するロコモティブシンドロームと、メタボリックシンドロームの関連性を明らかにした。どちらも50代から重複して出現しやすく、ロコモ該当者はメタボに該当する人の方がそうでない人より割合が高かった。この研究結果は、国際学術誌Scientific Reportsに掲載された。
ロコモは加齢に伴い進行する運動機能の低下を示し、要介護状態につながる重要な前兆とされている。特に勤労者のロコモは腰痛や転倒と密接な関係があり、健康的な社会生活を維持していくためには早期からの予防が大切だ。一方、メタボは心血管疾患や糖尿病のリスクを高めることが知られており、特定健診などでの測定も行われている。
この研究では、2021年度に健診を受けた3万5059人(平均年齢50歳)のデータを解析。ロコモは、立ち上がりテスト、2ステップテストと25項目の質問票で、移動機能の状態を多角的に評価する日本整形外科学会のロコモ度テストに基づいて評価した。その結果、ロコモは全体の約15%、メタボは約7.5%が該当。ロコモ該当者の割合は、メタボ該当者で約24%と、非メタボ該当者の約15%に比べて高く、メタボ該当者ではロコモのリスクが1.87倍に上昇することが分かった。ロコモの割合は加齢に伴い増加すると共に、全年齢でメタボのある者はメタボのない者と比べ、ロコモの割合が高いことも示された。
従来、ロコモは高齢者の足腰の衰えとして捉えられがちだが、この研究により、中高年期におけるメタボがロコモのリスク因子となることが統計的に示された。ロコモとメタボの合併は、肥満・高血圧・糖尿病・高脂血症といった代謝性疾患を悪化させるとともに、高齢期における要介護リスクをさらに高める可能性がある。
こうしたリスクを中年期の段階で早期に発見・介入するためにも、研究グループは、健診制度を活用してロコモ評価をメタボと併せて行うことの重要性を強調している。