今年の冬は、インフルエンザの流行が例年より早いようだ。厚生労働省によると、今季の主な流行株は「A香港型(H3/N2)」。この型は重症化しやすく、ワクチンの効果が得にくい傾向があるといわれる。例年にも増して、自身での予防対策が必要かもしれない。
そんな中、弘前大学・京都大学・大正製薬の共同研究チームが、個人の体質や生活習慣とインフルエンザ発症リスクとの関係を解析し研究結果を報告している。そこから見えてくるのは「インフルエンザにかかりやすい体質・生活習慣」の傾向だ。
解析に使われたのは、弘前大学COI-NEXT拠点が実施している大規模健康調査「岩木健康増進プロジェクト健診(IHPP)」のデータ。20歳以上の住民約1000人を対象に3000項目以上の健康データを収集し、AIを活用して、インフルエンザにかかりやすい要因165項目を抽出、その要因の関係性を詳細に分析した。
それによると、インフルエンザにかかりやすい傾向がある人は、「血糖が高め」「肺炎の既往あり」「多忙・睡眠不足」「栄養不良」「アレルギーあり」の5タイプに分けられるという。特に「肺炎の既往がある」「血糖が高め」「睡眠の質が良くない」といった複数の特徴を持つグループでは、それ以外のグループと比べてインフルエンザの発症リスクが約3.6倍だった。大正製薬のプレスリリースでは、感染症に詳しい内科医の久住英二医師がタイプごとの特徴と予防対策について解説している。
- 血糖が高め:血糖値が高い状態が続くと、白血球の働きが鈍くなり、免疫力が落ちてウイルスに感染しやすくなる。主食は白米よりも雑穀米や玄米など食物繊維の多いものを選び、食事は野菜→たんぱく質→炭水化物の順に、といった血糖を急に上げない食べ方を。間食や甘い飲み物は控え、果物は食後に少量。また、1日15〜30分のウオーキングなど軽い運動を習慣にすることで、血糖コントロールと免疫維持の両面に効果がある。
- 肺炎の既往あり:呼吸器が弱っている人は、肺や気道の粘膜を守ることが何より大切。部屋は湿度40〜60%を保ち、加湿して乾燥を防ぐこと、外出後や、食事前の手洗いでウイルスを洗い流し、体に入れないことが基本。鼻呼吸を意識し、口呼吸を減らすことで粘膜防御を。粘膜の健康を支えるβ-カロテン(にんじん・ほうれん草)やビタミンA・Cを意識的にとり、寝る前の深呼吸や軽いストレッチで横隔膜を整えるのも効果的。水分不足は粘膜の乾燥を招くため、こまめな水分補給も忘れずに。
- 多忙・睡眠不足:睡眠不足は免疫に関連するホルモンの乱れを招き、感染リスクを大きく高める。質の良い睡眠で疲労回復と免疫再生を促すことが重要。おすすめは、細胞の代謝と疲労回復のために働く肝機能を支えるタウリン(タコ・イカ・魚・牡蠣・あさり・しじみなどの貝)と、成長ホルモン分泌を助けるグリシン(魚や肉の皮部分など)の摂取。就寝1時間前にはスマホ・PCをオフにし、照明を落としてリラックス。温かい飲み物やストレッチで副交感神経を優位に。起床時間を毎日同じにし、睡眠時間が短い人は昼の15分仮眠で体をリセットすると効果的。
- 栄養不良:栄養バランスの乱れは免疫細胞を弱らせる。毎食、主食・主菜・副菜をそろえ、コンビニ食でも工夫を。緑・赤・黄・白・黒の5色の野菜・果物を意識し、特にキャベツ・レタス・ブロッコリー・柿・みかんなど抗酸化作用の高い栄養素を含む食材を積極的に。魚・卵・大豆・鶏むね肉など良質なたんぱく質を毎食取り入れ、朝食を抜かずに体温を上げる食習慣を。
- アレルギーあり:アレルギー体質の人は免疫が常に過剰に反応しており、炎症で防御機能が疲弊しがち。青魚(サバ・イワシ・サンマなど)に豊富なEPA・DHAを週2〜3回取り入れ、ビタミンC・E・ポリフェノールを含む果物や緑茶で抗酸化力を補いたい。油や加工食品のとりすぎは避け、外食は控えめに。鼻づまりがある場合は温湿布や入浴で血流を促進し粘膜を柔らかく保つことが大切。薬の使用は医師の指示を守り、自己判断での長期常用は避けよう。
インフルエンザの感染が拡大すれば、例年と同じように抗ウイルス薬や医療機関で使用する検査キットの不足や、医療機関が混雑して発熱してもすぐに受診できない状況になる可能性も考えられる。一人一人が予防を意識することは、自分と家族を守るのはもちろん、必要な人に必要な医療を届けることにもつながるはずだ。










