未来世代のはばたきを応援する「はばたけラボ」は、2001年に香川県で産声を上げた食育活動「子どもが作る弁当の日」を応援しています。25周年を迎える今年、提唱者・竹下和男氏が全国から集まったエピソード応募作品を通じて、子どもたちのみずみずしい成長を伝えます。本企画は、本サイトと連動してお届けします。

「弁当の日おいしい記憶のエピソード」文部科学大臣賞を受賞した「愛情いっぱいの炊き込みご飯」吉田かりん結愛さん(別府市立別府西中学校1年)
▼「愛情いっぱいの炊き込みご飯」(「弁当の日おいしい記憶のエピソード」文部科学大臣賞受賞作品)
5年前にオーストラリアから移住してきた家族と、90歳前後の老夫婦だけの家族しか、近くに住民がいない、大分県の田舎での心温まる家族間の交流の物語です。中学1年生になった吉田かりん結愛さん(別府市立別府西中学校)によって紡がれた作品の真ん中に、季節感たっぷりの「炊き込みご飯」がありました。
その地域の自然と一体化した暮らしを繰り返してきた老夫婦の話のすべてが、新参者の家族には知恵袋であったことでしょう。それは決して自然をねじ伏せ支配するのではなく、自然に畏敬の念を抱き、恵みに感謝し、共助の暮らしを楽しむ生活の知恵なのです。
「また作りすぎたわ」「食べきれんから」に込められたおばあちゃんの、かりんさん一家への心遣いが、大人の審査員たちの心に刺さりました。それは、もらってくれるほうが渡す側にとって助かるし、うれしいのだからという逆転の配慮なのです。その優しさが、知識としてだけでなく、体験としてかりんさんの心に染み込んでいきました。季節が巡ると、タケノコ、枝豆、シメジ、大根と具材が変わりつつ炊き込みご飯が届きました。翌年も、そしてその翌年も。
3年後におじいちゃんが突然亡くなり、おばあちゃんは、かりんさん一家をあまり訪ねてこなくなりました。楽しみにしていたものが届かなくなった時、彼女は炊き込みご飯を届ける側になることを思い立ちます。優しい心が育まれているからです。イメージ通りに作れない彼女はレシピをおばあちゃんに学ぼうとしました。この行動力も暮らしの中で育まれたものです。この時もおばあちゃんは謙虚でした。「役に立つといいけどね」と渡されたおばあちゃんのレシピノートは何十年もかけて書き込まれたものでした。
そのノートの最後に、おばあちゃんが何度も何度も見直したのであろうメモがありました。「食べる人の笑顔を思い浮かべて楽しく愛情を込めてつくること」。そのメモを見つけた彼女は、レシピ通りに料理すること以上に愛情を込めることを大切にしました。彼女の作った炊き込みご飯を受け取ったおばあちゃんは、泣きながら「おいしいよ」と言いつつ食べてくれたのです。
私的なことですが、くしくも1カ月前、料理好きの義姉の告別式がありました。式場に置かれていた義姉の数冊のレシピノートには、亡くなる数日前に義弟に届けた「巻き寿司」のレシピが書かれていました。料理を作ることほど、食べてもらう人の笑顔を思い浮かべるものはないかもしれません。だとしたら人格形成期にぜひとも子どもたちに体験させておきたいことは、台所に立たせることではないでしょうか。この作品のように、子どもたちが育つ環境は、過去が現在を、現在が未来を慈しむものであってほしいと思います。
#はばたけラボは、未来世代が思い切りはばたける環境づくりに取り組む共創プラットフォームです。企業・学校・地域とともに多様な取り組みを未来へつなげ、そのはばたきを支えるためにパートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。









