ヤマハがウクライナに楽器寄贈
オデッサ歌劇場の公演を支援

ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使(左)に寄贈目録を手渡したヤマハの中田卓也社長=東京都港区の駐日ウクライナ大使館、2024年2月13日
ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使(左)に寄贈目録を手渡したヤマハの中田卓也社長=東京都港区の駐日ウクライナ大使館、2024年2月13日

 

 ヤマハ(浜松市)は2月13日、ハンドメイドフルートなど同社の楽器5点をウクライナの国立オデッサ歌劇場に寄贈した。戦時下のウクライナで平和を願って公演を続ける同歌劇団側の寄贈要請に応じた。

 ヤマハの中田卓也社長がこの日、東京都港区の駐日ウクライナ大使館を訪れ、ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使に寄贈楽器の目録を贈呈した。寄贈する楽器はハンドメイドフルート2点、カスタムオーボエ2点、マリンバ1点の計5点。ヤマハによると、いずれも「世界のトップアーティストが使用するヤマハの最高級品」という。

ヤマハの中田卓也社長(右)から、おじぎして寄贈目録を受け取るウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使
ヤマハの中田卓也社長(右)から、おじぎして寄贈目録を受け取るウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使

 

 贈呈式であいさつした中田社長は「世界中の人々の心豊かな暮らしを音楽の力で実現するためにヤマハは活動しています。少しでもお役に立てることがあればと思い、今回フルート、オーボエ、マリンバを提供させていただいた。ヤマハは音楽の力を信じています。わずかな提供数かもしれませんが、公演を続けるオデッサ歌劇場の音楽が、大変な状況にあるウクライナの皆さんの心を少しでも癒やすことにつながればうれしい」と話した。

贈呈式であいさつするヤマハの中田卓也社長(左)
贈呈式であいさつするヤマハの中田卓也社長(左)

 

 コルスンスキー駐日大使は「音楽は平和の象徴です。今回の楽器寄贈は、日本の皆さんが平和を願い、ウクライナの人々と共にウクライナの平和な社会に向けて取り組んでいただいている証でもあります。ウクライナへの支援に感謝します」とお礼の言葉を述べた。

楽器寄贈のお礼を述べるウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使(左)の話を聞くヤマハの中田卓也社長(前列右から1人目)、外務省の中込正志欧州局長(同2人目)
楽器寄贈のお礼を述べるウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使(左)の話を聞くヤマハの中田卓也社長(前列右から1人目)、外務省の中込正志欧州局長(同2人目)

 

 贈呈式にはオデッサ歌劇場首席客演指揮者の吉田裕史さんや日本・ウクライナ友好議員連盟会長の森英介衆院議員、外務省の中込正志欧州局長も同席。吉田さんは「オデッサ歌劇場の音楽家は、戦時下で楽器のメンテナンスが十分できない。本来の音を出せずに苦しみ、悲しんでいる。オーボエ主席奏者の女性から、日本は楽器を制作している国ですよねと言われて、ヤマハに寄贈をお願いすることを思いついた。世界には約200の国があるが、楽器を制作できる国はそれほど多くない。平和を願い楽器を寄贈できるわが国を誇りに思います。オデッサ歌劇場の音楽家を代表してお礼申し上げる」と語った。

オデッサ歌劇場の状況を説明する同歌劇場首席客演指揮者の吉田裕史さん(右)。右から2人目は日本・ウクライナ友好議員連盟会長の森英介衆院議員
オデッサ歌劇場の状況を説明する同歌劇場首席客演指揮者の吉田裕史さん(右)。右から2人目は日本・ウクライナ友好議員連盟会長の森英介衆院議員

 

 森衆院議員は「(楽器寄贈が実現して)本当に良かった。ウクライナの皆さんと共に平和に向かって前進したい」と述べた。中込欧州局長は「わが国が世界に誇るヤマハの楽器が奏でる美しい音色がオデッサをはじめウクライナの皆さまに少しでも安らぎと希望をもたらすものとなることを願っています」とする上川陽子外相のメッセージを代読した。

 

6DSC_0663
日本とウクライナの曲を演奏したヤマハ吹奏楽団

 

 贈呈式では、フルートやオーボエ、マリンバなど6人編成のヤマハ吹奏楽団が、日本とウクライナの曲を演奏。日本の曲は、日本の田舎の風景を思い出させる唱歌の代表曲「故郷(ふるさと)」、ウクライナの曲は、ウクライナの作曲家ミロスラフ・スコリク(1938~2020年)の哀調胸に迫る美しい旋律の作品「メロディー」。いずれもあらためて音楽の力を再認識させるような好演奏で式出席者の大きな拍手を受けていた。

 寄贈するオーボエなどの楽器は適切なメンテナンスが欠かせないことから、ヤマハはメンテナンス支援も併せて行う予定という。今後、現地ウクライナでメンテナス技術研修の実施などを検討している。