「介護」という課題にも潜む「アンコンシャス・バイアス」  “思い込み”から自分を解放し、希望が持てる新しい家族関係を

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Vector illustration set. retirement home life and consultation scenes.

 「アンコンシャス・バイアス=無意識の思い込み」という言葉を目にしたり耳にしたりすることが多くなった。ダスキン(大阪府吹田市)の介護用品・福祉用具のレンタルや販売を行うヘルスレント事業は、介護における「アンコンシャス・バイアス」に注目。「親子双方の根底にあるアンコンシャス・バイアスが、介護や介護にまつわるコミュニケーションの妨げになっているのではないか」という仮説のもとに、親世代と子世代の両方を対象にした「介護に対するアンコンシャス・バイアスに関する実態調査」を行った。

 調査は6月29日~30日にかけて、インターネットを通じて行った。対象は、自身の年齢が60~80代で別居の子どもがいる男女(親世代)1000人(介護経験あり500人・なし500人)と、自身の年齢が20代~50代で60代~80代の別居する親がいる男女(子世代)1000人(介護経験あり500人・なし500人)の計2000人。

■介護経験者の方が介護をポジティブに捉える傾向

 ネガティブになりがちな「介護」のイメージについて、親世代・子世代を合わせた全体に尋ねた。「一般的な『介護』のイメージ」は1位から、「精神的な負担」(70.8%)、「肉体的な負担」(64.3%)、「金銭的な負担」(47.0%)、「重荷」(46.1%)、「つらい・苦しい」(43.2%)だった。

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 これを介護経験がある人とない人に分けて見たところ興味深い結果が得られた。介護経験がある人とない人を比較すると、介護経験がある人はない人に比べて、「親孝行」(介護経験あり40.6%・介護経験なし23.5%)、「恩返し」(介護経験あり30.1%・介護経験なし14.1%)、「家族の絆を深める」(介護経験あり19.4%・介護経験なし8.8%)など、ポジティブなイメージが高くなっていた。そして、逆に「肉体的な負担が大きい」「つらい・苦しい」「重荷に感じる」などのイメージを、介護経験がない人の方が強く持っていた。

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■いざ介護状態に。できるだけ自立したい親と家族で介護したい子・・・

 介護状態に直面した場合を想定し、親世代には「どのような方法で介護してもらいたいか」、子世代には「どのような方法で介護したいか」も尋ねた。親世代も子世代も8割以上が「外部施設・行政サービスを利用した介護」(親世代84.5%・子世代82.2%)を望んでいた。「家族・親族による介護」は、子世代は56.7%と半数以上が望むのに対し、親世代は26.0%にとどまった。また、親と子の暮らし方について聞くと、「子どもは親の暮らしをサポートすべきだと思う」と答えた子世代は66.7%で、親世代の45.3%に比べ 21.4ポイントも高くなっていた。実は、親世代は望んでいない「家族・親族による介護」を、子世代は「家族で何とかしなきゃ」と思ってしまう面もあるのかもしれない。

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■親子の終活問題の話はできても、「介護」の話はしづらい・向き合えない?

 「介護」や「終活」といったテーマをざっくばらんに親子で話し合えている人はどれぐらいいるのだろうか?  親世代は子ども、子世代は親と終活について話し合った経験について尋ねたところ、親世代の62.3%、子世代の63.0%と約6割は終活についての話し合いをした経験を持っていた。

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 話題にした内容(複数回答)を聞くと、「お墓」(親世代59.1%・子世代54.6%)や「お金」(親世代54.9%・子世代55.9%)については、親世代も子世代も6割近くが話し合っていた。しかし、「老後の世話(介護)」になると、話し合ったことがあるのは親世代25.4%、子世代38.9%で、全体で3割(32.2%)だった。お墓の話はできても、介護の話はしづらい・・・という状況が浮かび上がる結果となった。

 

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■「介護は家族の問題」という家族観バイアス、男女で意識差も

 さらに、介護をすることに対する意識について尋ねた。「家族が介護をすることは家族愛や親孝行の表れである」という考えについて、「そう思う」と答えたのは男性59.7%、女性50.7%と、男女間に考え方の若干のズレが生じた。親世代の男性(60.4%)と親世代の女性(47.4%)では13.0ptの差があり、ズレが広がっていた。

 介護が必要になった場合、「家族に介護してもらえる方がうれしい」という設問には、「そう思う」と回答した男性が約6割(57.9%)なのに対し、女性は約4割(39.3%)。こちらも親世代の男性(63.8%)が最も高く、親世代の女性(35.8%)が最も低かった。

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 また、男性の 52.7%は「家族の問題は家庭内で解決すべき」と考えており、女性の40.0%を10ポイント以上、上回った。年代別では20代が57.4%と最も高かった。さらに、「家庭の問題を外に見せてはいけない」についても、女性(18.4%)より男性(27.9%)が多く、女性より男性に“世間の目”を気にする傾向が見られた。「介護」という課題にも潜む「アンコンシャス・バイアス」  “思い込み”から自分を解放し、希望が持てる新しい家族関係を 画像8

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 一方で、「外部の介護サービスを積極的に頼るべきか」については、全体の92.9%が「頼るべき」と答えた。男女とも、親世代も子世代も、介護経験の有無も関わらず、9割前後かそれ以上が「外部の介護サービスを積極的に利用すべき」と考えていた。

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■坂東眞理子さんに聞く「介護の思い込み」に捉われない親子の心構え

 今回の調査結果を受け、昭和女子大学総長で『70歳のたしなみ』『幸せな人生のつくり方』『女性の覚悟』などの著書がある坂東眞理子氏がコメントを寄せた。“介護は家族が担うのが当たり前”と考えられていた時代から、“介護が必要になった高齢者を社会全体で支える”ことを目指して2000年に創設されたのが現在の介護保険制度。それから20年超が過ぎたが、坂東氏は「介護への意識も変わってきましたが、それでもいまだにアンコンシャス・バイアスは残存しています。多様性が重視される現代は、個人も社会も介護に関する考え方を新たにする過渡期では。かつての“こうあるべき”という考えが薄れるとともに、介護保険や外部サービスを活用した成功事例が伝わっていくことで、新しい介護や老後の在り方が確立されていくはずです」とのコメントを寄せている。

 介護を経験していない人より介護を経験している人に、介護に対する前向きな思いがあるという調査結果にも触れた。「『施設に親を入れるなんて親不孝』と思い込んでいた方から、お試しで施設を利用したら親御さんに笑顔が戻り親子関係が円満になったといううれしい話も聞きます。そのような希望が持てる事例がさらに広まっていくと、ネガティブなアンコンシャス・バイアスから解放されるきっかけになりそうです」とした。

 そして、「親世代は子どものためを思い『自立したい』、子世代は『育ててくれた親に恩返ししたい』と思っています。相手のことを大切に思うゆえのギャップを改善するためには、まずは会話をすることです。世間話をする中で将来どうしたいのか、自然な流れで話し合えるようになるとよいですね」とアドバイス。「まずはできることから」として、親世代には、介護が必要になった自分の状況に対し、貯蓄の一部を外部サービスなどの利用に充てることで子どもの負担が減り、自分の自立にもつながること、子世代には、介護に関するネガティブな報道や罪悪感のみにとらわれず、必要に応じて外部サービスを利用しながら、まめに連絡したり会いに行ったりするなど新しい家族関係を作る気持ちを持つことを提案している。