カルチャー

「問題作」が「傑作」になるまで 東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」始まる

「重要文化財の秘密」ポスター

 今でこそ「傑作」と衆目一致する作品も、発表された当時は、それまでにない新しい表現を打ち立てた「問題作」だった!

 そうした作品の評価の変遷を追うことは、評価のポイントがいかに変わっていったのか——すなわち、近代日本美術史の研究がいかに深まって来たのかの反映でもある。

 明治以降の絵画・彫刻・工芸の需要文化財のみで構成される展覧会は今回が初となる。そうした重要文化財は2022年11月現在、68件が指定されているが、まだ国宝はない。今回はそのうちの51点が展示される。会期中展示替えあり。

 東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」が3月17日(金)から5月14日(日)まで開催される。休館日は月曜日(ただし、3月27日、5月1日、8日は開館)。開館時間は午前9時半から午後5時まで(金・土曜日は午後8時まで)。入館は閉館30分前まで。観覧料は一般1800円、大学生1200円、高校生700円。

 美術館へのアクセスは東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口から徒歩3分。問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)まで。

 10年前の開館60周年記念展では、同館の所蔵品・寄託作品計13点の重要文化財がまとめて展示されたが、今回はその後に指定された作品や、国立工芸館の鈴木長吉の「十二の鷹」も加えた17点が初めてまとまったかたちで紹介される。

 日本画からは、近代絵画最初の重要文化財に指定された狩野芳崖(かの・ほうがい)の「悲母観音」、こちらを見据える黒猫を見事に描いた菱田春草「黒き猫」、横山大観の全長40メートルにもなる大作「生々流転」、“現代的な問題作”(!?)とみなすことができる竹内栖鳳「絵になる最初」などが展示される。

黒田清輝 《湖畔》 重要文化財 1897(明治30)年 東京国立博物館蔵 展示期間4月11日~5月14日
黒田清輝 《湖畔》 重要文化財 1897(明治30)年 東京国立博物館蔵 展示期間4月11日~5月14日

 洋画部門では、肌で触るような質感へのこだわりが感じられる高橋由一「鮭」や、誰もが知る名作だが重要文化財指定は1999年まで待たなければならなかった黒田清輝「湖畔」、これまた制作から90年近く経ってから指定された萬鉄五郎「裸体美人」、“日本版モナリザ”ともいえる岸田劉生「麗子微笑」などが紹介される。

萬鉄五郎《裸体美人》重要文化財 1912(明治45)年 東京国立近代美術館蔵 通期展示
萬鉄五郎《裸体美人》重要文化財 1912(明治45)年 東京国立近代美術館蔵 通期展示

 彫刻も見どころたっぷり。上野の西郷さんや皇居前の楠木正成像などで知られる高村光雲「老猿」、精巧な渡り蟹があしらわれた初代宮川香山の「褐釉蟹貼付台付鉢」、江戸の手わざによるものか、あるいは明治の最先端技術によるものなのか、疑問が生じている鈴木長吉による「十二の鷹」といった作品が並ぶことになる。