コロナ禍以後、テレワークが定着するなど、多くの企業が柔軟な働き方を導入している。一方、勤務時間と生活時間との区別が付けづらくなるといった課題も明らかになってきている。そこで、日本労働組合総連合会(略称:連合、東京)は、勤務時間外の業務上の連絡に関する意識や実態を調べる「“つながらない権利”に関する調査2023」を行った。インターネットリサーチにより、9月13日から9月20日にかけて、18歳~59歳の有職者(正社員・正職員、派遣社員・派遣職員、契約社員・嘱託職員・臨時職員、パート、アルバイト、フリーランス)を対象に実施。1000人の有効サンプルを集計した。
1000人が業務で日常的に使用しているコミュニケーションツールは、「スマートフォン(通話・メール)」(59.3%)が最も高くなり、「PCメール」(52.5%)、「メッセージアプリ(LINEなど)」(40.6%)、「Web会議システム」(33.5%)、「固定電話」(32.9%)、「チャット(Slack、Chatworkなど)」(26.8%)と続いた。
「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがあるか」については、雇用者(942人)の72.4%が「連絡がくることがある」と回答、頻度については、「ほぼ毎日」(10.4%)、「週に2~3日」(14.3%)、「月に2~3日」(12.1%)、「月に1日以下」(17.9%)などに回答が分かれたが、終業後や休日・休暇日など勤務時間外に職場の人から業務上の連絡がくることがある人は多いようだ。コロナ禍前との比較を見ると、「連絡がくることがあった/ある」と回答した人の割合は、コロナ禍前の64.2%から現在の72.4%へ8.2ポイント上昇していた。
部下・同僚・上司からの勤務時間外の連絡(業務上の連絡)について、どのような連絡を許容できるか聞いたところ(複数回答)、「すぐに対応が必要なことに関する連絡」(48.5%)が最多。緊急対応が必要となるものであれば仕方がないと考える人が多いようだ。「単なる報告」は34.2%、「返信の必要がある連絡」は33.9%。15.1%の人は「許容できるものはない」と答えた。
勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくるとストレスを感じるか聞いたところ、「感じる」は62.2%、「感じない」は37.8%だった。勤務時間外の業務上の連絡に関して、自身の職場で調査等の実態把握が行われたことがある」のは20.5%、「ない」が51.0%、「わからない」が28.6%。勤務時間外の連絡のルールについては、公式・非公式を問わずあるかどうかを聞いたところ、「ある」は25.8%、「ない」は46.3%、「わからない」は27.9%だった。
勤務時間外(休日、休暇日含む)に、仕事上のメールや電話への対応を労働者が拒否することのできる「つながらない権利」についても聞いた。「“つながらない権利”によって勤務時間外の連絡を拒否できるのであればそうしたい」と思う人は、全回答者の中で「非常にそう思う」が29.2%、「ややそう思う」が43.4%で、「そう思う」の合計は72.6%。「まったくそう思わない」(5.9%)と「あまりそう思わない」(21.5%)を合わせた「そう思わない」の合計は27.4%だった。
“つながらない権利”が法制化された場合、勤務時間外の連絡を拒否することによって「自身に生じる可能性のある勤務評価やキャリア形成、不利益な取り扱い」「勤務評価等への影響」「昇進・昇格など今後のキャリア形成への影響」については、「心配」「心配ではない」の回答者数が拮抗する形となった。
業務について生じる影響に対しては、「緊急性の高いトラブルへの対応が遅れてしまうこと」については64.9%が、「業務効率が低下すること」については59.0%が「心配」と回答。“つながらない権利”の行使が、トラブル発生時の対応の遅れや業務効率の低下につながる可能性を懸念する人も多いようだ。