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大作にはない味わいが楽しめる小品映画『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』『向田理髪店』【映画コラム】

『向田理髪店』(10月14日公開)

(C)2022「向田理髪店」製作委員会

 向田康彦(高橋克実)は、妻の恭子(富田靖子)と共に、九州の筑沢で親から受け継いだ理髪店を営んでいた。理髪店の客は、幼なじみや近所の老人たちがほとんどだが、ある日、東京で働いていた息子の和昌(白洲迅)が帰郷し、会社を辞めて店を継ぐと言い出す。

 原作・奥田英朗、監督・森岡利行。筑沢という架空の町が舞台だが、ロケは大牟田市で行われた。

 父と息子の葛藤 街で起こる騒動や人間模様を描きながら、過疎化、少子高齢化、介護、結婚難といった地方が抱える問題や、東京と地方との距離を浮き彫りしていく。夫と息子との間を取り持つ母親役の富田ののほほんとした雰囲気がとてもいい。

 ところが、後半、映画のロケ隊が街にやってくるあたりから妙な展開になるのが残念。その「赤い海」という映画内映画が、もろに『レオン』(94)のパクリで、しかも作りが稚拙なもので(わざとそうした?)、困惑させられるところがあった。

 ただ、ラストシーンの「赤い海」の上映会は、ちょっと『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)風で、キャストやスタッフ、地元のエキストラの一人一人に敬意を払った感じがうかがえたので、地方発信の映画として、盛り返した感があった。

(田中雄二)