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スピード感にあふれたストレートなスポーツ映画を見た思いがする『グランツーリスモ』/ケネス・ブラナーによるシリーズ第3弾『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』【週末映画コラム】

『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』(9月15日公開)

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 流浪の日々を送る名探偵エルキュール・ポアロは、死者の声を代弁するという霊媒師(ミシェル・ヨー)のトリックを見破るために、子どもの亡霊が出るという謎めいた屋敷での降霊会に参加する。ところが、霊媒師が不可解な方法で殺害される事件が発生。ポアロは真相究明に挑むが…。

 ケネス・ブラナーが、アガサ・クリスティの原作を映画化し、監督・製作・主演を務めた『オリエント急行殺人事件』(17)『ナイル殺人事件』(22)に続くシリーズ第3弾。前2作は有名な原作で、再映画化だったこともあり、新鮮味に欠けた。

 ところが、今回の原作は比較的地味な『ハロウィーン・パーティ』であり、初の映画化だったため、その分自由度が増し、舞台をベネチアに移し、オカルト味を加え、ポアロの心の屈折や神への不信を描くなど、ブラナー流の新解釈を施している。

それ故、クリスティの原作のファンにとっては、賛否両論があると思われるが、これまで見たことがないポアロという点では目新しさがある。

 また、ジュディ・ガーランド主演の『若草の頃』(44)が隠し味になっているところにもブラナーの趣味が出ている。

(田中雄二)