-では、ムロさんがお芝居をする上で、信条としていることは?
忘れてはいけないのは、「恥ずかしいことをやっている」という意識です。演じるということ、つまり誰かが描いてくれた脚本のせりふを覚えてカメラの前やお客さんの前に立つということは、とても恥ずかしいことだと僕は思います。人によっては気持ち悪いとか、つまらないと思われるかもしれないし、決して褒められることばかりではない。そんなことは分かっていて、それでも人前に立っているんですから、自分は気持ち悪い人間なんですよ。しかも、それでうまくいったら、いい気分になってしまうんですから、役者はおかしな人間の集まりです。それは忘れてはいけないと思います。
それから、もう一つ、「怖がること」は大事にしています。役者はやりがいもあれば怖さもある。調子に乗らなかったらできないし、でも、調子に乗り過ぎてもいけない。両面があるんです。僕は、調子に乗りやすいタイプなので、乗り過ぎないようにと思うことが多いですが(笑)。
-ところで、本作のテーマが「後悔と再生の物語」ということにちなんで、ムロさんが落ち込んだときにそこから立ち直る方法を教えてください。
僕は、その後悔や失敗を全部分析します。そして、記憶に残します。その上で、引きずっても仕方ないと考えるようにしています。記憶すれば、次は同じような失敗や後悔をしないだろうと。あっけらかんとしている方がカッコいいと思いますが、僕みたいなタイプにはそれはできない。自己分析をして自分で自分を操作しないと次に向かえないんですよ。それにまた同じ失敗をしてしまうんで。
-自己分析はきつくないですか。
めちゃめちゃきついですよ。自分の恥や見たくないところも見なければいけないので(笑)。でも、僕ももう46歳、されどまだ46歳。やっていくしかないですね。まだまだどこかで調子に乗るでしょうし、どこかで気持ちよくなってしまうでしょうし、落ち込んで失敗することもあると思うので、日々鍛え上げるしかないと思っています(笑)。
(取材・文・写真/嶋田真己)
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