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中村倫也&木下晴香が語る、落ち込んだときの立ち直り方「失敗も前進している証拠」【インタビュー】

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-それぞれの役柄を演じる上で意識していることは?

中村 天才という表現が合っているのかは分からないですが、常人とは違うところで葛藤し、もがき、とらわれ、執着している。そうしたさまざまな感情の矢印が彼の中で飛び交っていて、常に混乱の中にある人だと感じました。浮世離れしているし、子どもっぽい部分も持っているのですが、それでも彼なりの人生を全うすべく奮闘していて、矢印は内だけでなく外にも向いています。なので、それだけのエネルギーは常に持って演じなければいけないなと思っています。そうして彼は矢印の中で混乱していますが、僕がイメージしているのは、大きな川の流れのようなものに飲まれている姿です。特に、この芝居の前半では、川の流れに木の葉を落としたら、予測できない川の流れでかき回されるかのような感覚で演じています。

木下 マリーは、そんなベートーベンを引っ張り上げようというぐらいの思い入れを持っている姿をお見せしたいと思っています。ベートーベンが彼女のどんなところに引かれたのかを見ている方に納得していただけるように、エネルギーを上げて演じています。私の持っている雰囲気は「光」か「影」かでいったら「影」だと思うのですが、今回のマリーは、希望や夢といった明るい「光」を確固たるものとして持ち続けている女性です。今作ではそこは意識していきたいと思っています。

-ところで、本作ではベートーベンが聴力を失いながらも音楽へ情熱を注ぐ姿が描かれていますが、お二人は落ち込んだり挫折したりしたとき、どのようにして立ち直りますか。

中村 僕は真正面から向き合います。僕が20代前半の頃、あまり仕事がなかったんです。役者をやっていて仕事がないというのは、魅力や能力がないから求められないということに直結するので、それは僕の人生の中における最大の絶望でした。ですが、逃げずに向き合わなくてはいけないと思ったんです。それで、真剣に向き合って…、それからは建設的な思考で前を向くことができました。それがきっかけかは分かりませんが、常に整理する脳の思考回路が身について、今では落ち込むこと自体が少なくなりました。もちろん、落ち込む要素や失敗などもありますが、それも前進している証拠だと考えれば、むしろ喜ばしいことだと思うようになったんです。それに、人生レベルで考えたら、最後に笑えればいいやと思っているので、小さいことにクヨクヨしなくなりました。

木下 私は、人から言われた言葉でショックを受けたときには、自分の中で頑張ろうと思える言葉に変換して受け止めるようにしています。それでも、すぐに落ち込んでしまうのですが(笑)。そこから私も逃げたくないので、きちんと向き合って、落ち込んでしまうような出来事や言葉をそこから頑張るための“起爆剤”にしたいと思っています。

-公演への意気込みを。

中村 いつも思うのは、面白いと思ってもらえるものを作りたいけれども、それは、結局は自分のため。面白いと思ってもらいたいと思う欲だなと思います。それと同時に、結局、誰が面白いと思わなくても、自分が面白いと思っていればいいという思いもあります。なので、いつも、誰のためでもなく自分のために頑張っていますし、それが皆さんのお口に合えばうれしいなと思いながら作品を送り出しています。今回も、僕らが作ったものが、少しでも見てくださる方々の人生とリンクして、見てよかったと思ってもらえるように、精いっぱい、汗水と鼻水垂らして、体を酷使したいと思います。

木下 私たち演じる側にとっても、お客さまにとっても、これほどエネルギーあふれる濃密な作品にはなかなか出会えないと思います。必死になりながら一生懸命千秋楽まで頑張りますので、ぜひこのエネルギーを劇場に感じていただけたらと思います。

(取材・文/嶋田真己)

ミュージカル「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」

 ミュージカル「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」は、10月29日〜11月13日に、都内・東京芸術劇場プレイハウスほか、大阪、金沢、仙台で上演。
公式サイト https://musical-ludwig.jp