-そのほか、逸馬の登場シーンで印象的だったことは?
万太郎と一緒に中濱万次郎(宇崎竜童)さんに会いに行くシーンは特に印象的でした。逸馬が万太郎を中濱さんに紹介するんですけど、そこは万太郎のためでもありましたが、それぞれの追い求める自由に対して、3人がそれぞれのベクトルで向き合う瞬間だったんですよね。その空気感やまなざしみたいなものが、すごく好きで。
-物語の上でも大事なシーンですね。
そして何より、あのシーンは宇崎さんがいらっしゃったので、めちゃくちゃ緊張していたんです。そうしたら、本番直前に宇崎さんが僕らを呼び止め、誰もいないところで3人だけで円陣を組んで「やるぞ!」とやってくれたんです。それで気持ちがぐっと固まって。3人の間に同志として大事なものがないといけないシーンだったので、宇崎さんがそんなふうに先導してくれたことに、すごく感動しました。
-演じる中で感じた「らんまん」という作品の印象は?
僕は坂本龍馬が好きで、幕末から明治にかけての時代感がすごく好きなんです。当時のエネルギー感は、演じる側としてもすごく身が入りますし、自分が信じるものに対して、真っすぐに生きることの勇気や楽しさなど、そのかけがえのなさも教えてくれるので。ただ、好きなものを追い求めるときは、人それぞれに困難もあります。そういう感情に寄り添ってくれるのが「らんまん」じゃないかなと。しかも、その中心にいる万太郎が人をつないでいく姿がとても温かいし、それを植物というモチーフを通して見せてくれるから、より美しくて感動的なんです。その連鎖が絶妙ですよね。
-それでは最後に、視聴者へのメッセージを。
思ってもいなかった朝ドラ出演という貴重な機会を頂き、僕の役者人生の中でとても大事なステップになると同時に、すごくいい経験をさせてもらっています。すてきな出会いもあり、役者としての可能性にも気付かせてもらえたので、自分にとってかけがえのないものになりました。この作品をご覧いただければ、必ずや皆さんの人生にも希望の種が芽吹くと思うので、小さく芽吹いたその新芽を、ぜひ人生の大事な指針にしていただければと思います。ぜひこれからも「らんまん」を楽しんでください。
(取材・文/井上健一)