-現在は、お笑いの仕事をしながらも、劇団「山田ジャパン」の公演にコンスタンスに出演しています。演劇が、ライフワーク的なものになっているのでしょうか。
ライフワークという言葉の意味をきちんと認識できていないかもしれませんが、私の中で大切な存在です。ここに来ると、やっぱり演劇が好きなんだって確かめられるんです。いつも楽しい。普段はピンなので、人と何かを作ったり、集団でオチに向かって笑いを作っていくのも、楽しいです。
-では、いとうさんにとって「笑い」とはどんなものですか。
私は、本当に小さい頃からドリフの公開収録を見に行っていたくらい、お笑いが大好きでした。当時は、そうしたお笑い番組がたくさんありましたよね。とにかくずっと見ていました。「笑い」って、本当にすごいと思うんです。よく役者さんが泣かせるのは簡単だけど、人を笑わせるのは大変だと言うけれど、いやぁ。そりゃ笑わせるの大変ですが、泣かせるのも大変ですよね(笑)。
-「笑わせる側」に立ちたいと思ったのはどういった思いからだったのですか。
単純に、人を笑わせたい、幸せにしたいと思ったから。なんて言えたらすてきですが(笑)、自分のためですね。人が笑っているのが好きなんですよ。笑っているのを見るとアドレナリンが出て自分がうれしくなるんです。お笑いの世界に入った後も、イヤな思いをしたり、スベって落ち込むこともありますが、そこから復活するのはまた“ウケること”以外はないんですよ。人に笑っていただくことで、自分も幸せになっているんだと思います。
-今回の舞台「愛称⇆蔑称」は“あだ名”をテーマにした作品ということですが、脚本を読んでどんな感想を抱きましたか。
今はあだ名ではなく、みんな「さん」付けをしなくてはいけないというところから(劇中では)議論が始まるのですが、私の世代だとその感覚が分からない。そういう時代なんだということは理解しますし、あだ名によって嫌な思いをした人もいっぱいいるというのも分かるのですが、線引きの難しさを考えながら日々、稽古をしています。私自身は「あーちゃん」と呼ばれてきました。中三の頃にウーパールーパーが流行って、私の顔が似ているというので「ウーパー」とか「ルーパー」と呼ばれたことはありましたが、それ以外はずっと「あーちゃん」だったので、あまりあだ名というものはなくて。だからなのか、40歳をすぎて「イッテQ」に出るようになって「ババア」って呼ばれるようになった時に、「やった!」と思っちゃって(笑)。私にアイデンティティーや個性ができたって。改めて考えてみると、立木(文彦)さんのナレーションのお声や番組を作っている皆さんの愛情を感じるから、「ババア」と言われても悪口じゃないと思えるからかもしれません。やめてくださいと言われることもありますが、すごく難しいですよね。自分は気に入っちゃってるから(笑)。でも確かに愛情のある「ババア」はいいけど、もし、その辺で知らないやからに絡まれて「おい、クソババア」って言われたら、「なんだよ、お前」ってなりますよね。そう考えると、本当に難しいテーマではあるなと思います。もしかしたら正解は一生出ないのかもしれないし、それぞれの意見があっていいと思いますが、お客さまにとっても身近に感じられる題材だと思うので、一緒にああだこうだ、考えていただけたら。
-最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージを。
重複いたしますがいろんな方が直面する可能性のある、難しい問題ではありますが、そうした討論会にお客さまも参加するような気持ちで見ていただけたらと思います。ただ、そうはいってもコメディーでもありますので(笑)。楽しく気軽に見にきていただけたらうれしいです。
(取材・文・写真/嶋田真己)
舞台「愛称⇆蔑称」は、3月7日~15日に都内・六行会ホールで上演。