カルチャー

「悪」は排除せず、正しく取り込むべし 『悪さをしない子は悪人になります』

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 少年が何らかの問題を起こしたとき、どう向き合うのがいいのだろう。新潮社(東京)は新潮新書から『悪さをしない子は悪人になります』(廣井亮一著、税込み858円)を刊行。著者の廣井氏は元家庭裁判所の調査官で、実際に18年間にわたり数百人の非行少年たちを導いてきた経験から「悪」との向き合い方、更生へのさまざまな方法を語っている。

 何らかの問題を起こした少年がいると、われわれの視線は問題を起こした当人のみに向かい、「なんて悪い奴だ」「そのねじ曲がった根性を叩き直す必要がある」という排除の形をとりやすくなってしまう。しかし「最初から悪い」少年などほとんどいない、と著者は語る。「問題を起こす少年が概して恵まれない環境にいることは、私たちも経験的に知っています。実際には『少年を取り巻く関係の歪(ゆが)みが“問題”という形で少年を通じて表現されている』と考えた方が自然なのです」。そして関係のゆがみを調節するためのアプローチを取れば、負の方向に発散されていたエネルギーを正しく方向付け、活用することができるという。本書では「悪」に関するさまざまな考察を「悪理学」として展開、非行をよりよく活用するための方法を紹介している。司法による強制と臨床的関わりによる受容を組み合わせたアプローチや、家族全体をひとつの「人格」に見立ててそのゆがみを調節するアプローチ、中には「家の構造と間取り」に注目して更生を目指すというユニークなものもある。

著者:廣井亮一
著者:廣井亮一