はばたけラボ

【はばたけラボ 先輩に聞く】はばたきに必要なのは、“考えるよりも、動くこと”――日立造船株式会社・梅本碧海さん

 未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。高等専門学校で機械工学を学び、日立造船株式会社で働く梅本碧海(うめもと・たまみ)さん。女性が1割ともいわれる機械系エンジニアの世界について聞きました。

 

日立造船株式会社で働く梅本碧海
日立造船株式会社で働く梅本碧海さん
Q.1 エンジニアを目指した理由は?

 子どもの頃から「ものづくり」が好きで、手を動かせば答えを出せる算数も好きでした。父が機械工学科出身で、将来は父と同じ工学系に進みたいと思っていました。中学時代に高専の存在を知り、寮に入ってしっかり勉強したくて、家から離れた舞鶴高専を選びました。専門的な勉強が合わなかったらどうしよう、閉鎖的な環境に適応できるかなどたくさん悩みましたが、それでも「ものづくり」をしたい気持ちが強くて。高専時代は、ロボットを作ったり、旋盤を回して加工をしたりと、工作機械を使うのがとにかく楽しかったです。

Q.2 現在の仕事は?

 プラント工事・試運転の現場監督をしています。今回の現場には所長の元に現場監督が10人弱、作業員が多い時は100人くらいいます。工事期間中は毎朝8時前に朝礼があって、午前中にプラント内、正午にJ V(ジョイントベンチャー:大型プロジェクトを進める際の共同企業体)の会議をします。「今日はクレーンをこんな風に使うから立入禁止」とか、午前中に打ち合わせた作業を調整するんです。合間に書類整理をしながら、間違いやすい作業を自分の目でチェックして書類に残していきます。夕方5時前には現場が終了して、書類をまとめて帰ります。現場では、安全管理が一番大事なんです。危険予知活動、KYっていうのですが、毎朝その日にする作業を洗い出して、そこにはどんな危険があるかを作業員と話し合います。物を持って作業するとつまずくので足元注意とか、安全帯を必ず付けるとか。日常でも睡眠をしっかり取って、熱中症なんかで現場で倒れて事故を起こさないよう体調管理をしています。

Q.3 女性が少ない業界ですが?

作業員からも「(女性を)初めて見た」と言われました。プラントの建設現場ではまだ少ないけれど、ゼネコン業界では女性も増えているようです。とはいえ、高専でもクラス40人中、女子は3人。日立造船でも、女性初の現場監督です。技術系の女性は1割程度ではないでしょうか。そもそも機械工学を専攻する女性が少ないのは、女性自身が女の子らしくないと思っているからかもしれません。女性が苦労する面もちょっとあります、体力仕事なので。作業着や靴のサイズも合わないし。普段は会社で用意してくれるのですが、急いで買い替えたい時に簡単には買えないんです。でもそれ以外では、むしろ「何か困っていることない?」と気を遣っていただいています。今の施設は規模が大きいので、トイレや更衣室も女性用が設置されていて働きやすいです。

Q.4 エンジニアになって良かったこと、今後の目標は?

現場作業ができることがうれしいです(笑)。それに、大きな施設に携わるのは達成感がありますね。新聞で火入れ式(初めて燃焼炉に着火する安全祈願式)の記事を見ると、「これ、私が関わって作った」って。あと、北海道に来たのが初めてで、赴任中の1年半でいろいろ旅行できました。小樽、帯広、釧路に行ったり、神威岬で食べたウニがおいしかったです。今後は、もっと現場や機械のことを勉強したいです。最初は分からないことだらけで、作業員に「これ、どうなってるの?」と怒られた時に、どこの何を言われているのか全然分からなくて。とりあえず現場に行かなきゃと思って、実際に自分の目で確認しにいったら、どうにかなりました。24年秋からは、東京都のプラント工事に行くことが決まっています。今回の3倍くらいの規模のごみ処理場で、ここでは見られなかった、いろんな機械を見るのが楽しみです。

番外Q 「はばたけラボ」が問い掛けるテーマ、〝ヒトは「 」でになる〞あなたの考える「  」に入る言葉を教えてください。

分からない時は考えるよりも、とりあえずやってみる、動くことが大事だと感じています。先輩に頼らなくても対応できるよう、私も頑張っていきたいです。また、将来の道を決める時は、その道についてたくさん調べて、納得して選ぶことが大切だと思います。高専に入ってから苦労した時期もありましたが、自分で納得して選んだ道だったので乗り越えられたと思っています。

ごみ焼却発電施設

 廃棄物をストーカ炉と呼ばれる燃焼装置で燃やし、安全に処理する施設。燃焼で生じたエネルギーを蒸気として回収して蒸気タービン発電機で電気も作る。千歳市の施設は22年9月にプラント工事を開始。

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ごみ焼却発電施設の全景

 

梅本碧海(うめもと・たまみ)/2001年生まれ。大阪府堺市出身。舞鶴工業高等専門学校機械工学科卒。22年日立造船株式会社に入社。同社初の女性現場監督として、北海道千歳市でごみ焼却発電プラント建設プロジェクトに従事。


#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。