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特撮に目を見張るものがある『沈黙の艦隊』/大阪を舞台にしたピカレスクロマン『BAD LANDS バッド・ランズ』【週末映画コラム】

『BAD LANDS バッド・ランズ』(9月29日公開)

(C)2023「BAD LANDS」製作委員会

 舞台は大阪。「名簿屋」の高城(生瀬勝久)に雇われている橋岡煉梨(通称ネリ=安藤サクラ)は、オレオレ詐欺の受け子を手配し、指示を出す“三塁コーチ”と呼ばれる役割を担っている。一方、刑務所から出所したばかりの弟の矢代穣(通称ジョー=山田涼介)は、高城に仕事を紹介してもらおうと姉を頼ってきた。

 2人で仕事をすることになったネリとジョーだったが、ある夜、思いがけず3億を超える大金を手にしたことから、さまざまな巨悪から命を狙われることになる。

 原田眞人が監督・脚本・プロデュースを務め、黒川博行の小説『勁草(けいそう)』を映画化したクライムサスペンス。同じ原作者の『後妻業の女』(16・鶴橋康夫監督)同様、大阪を舞台にしたピカレスクロマン(悪漢映画)の趣がある。

 原田監督は古今東西の過去の映画からの影響を語ることが多いが、今回は、タイトルは殺人を繰り返しては逃亡する男女の逃避行を描いたテレンス・マリック監督の『地獄の逃避行』(73)の原題「Badlands」から取ったという。

 また、マーティン・スコセッシ監督の一連の犯罪物に見られるような、矢継ぎ早に繰り出されるせりふ(大阪弁)、スピーディーに動き、時にはぐるぐると回るカメラワークなどが印象に残った。

 そして、脇役が目立つのも原田映画の特徴の一つ。今回も主役の姉弟(安藤、山田が大熱演)に絡む、元やくざ役の宇崎竜童、裏の顔を持つNPO法人理事長役の生瀬勝久、大阪府警の刑事役の吉原光夫、同府警の班長役の江口のりこらが面白い味を出している。

(田中雄二)