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重岡大毅「芝居には『生きざま』が現れる」 東野圭吾原作の単独初主演映画でつかんだ俳優としての手応え 『ある閉ざされた雪の山荘で』【インタビュー】

©2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社

ーワンシチュエーションのミステリーですが、お芝居はどのように?役を事前に作り込んでいったのでしょうか、それとも現場でセッションするような感じで?

 その両方ですね。僕の大好きな冒険家の植村直己さんが「準備こそすべて」という名言を残しています。やれることは事前にすべてやり、現場ではすべて捨てる。本当にその通りで、事前の作り込みはもちろん大事ですが、あまりそこに凝り固まっていると、柔軟さがなくなってしまいますから。だから、その両方をいいあんばいでコントロールすることが大事なのかなと。

ーそういう意味では、久我には重岡さんの素の部分も出ていると?

 思いっきり出てますね。僕はどの役でも、自分の中にあるものを、いかに出せるかが勝負だと思っています。例えば、僕自身が劇団“水滸”に入りたいと思っているわけではありませんが、久我がそこまで入りたい劇団“水滸”に当たるものは、僕にとっては何だろうと。そんなふうに自分に置き換え、お芝居に反映していくんです。だから結局、突き詰めていくと、お芝居はすべて“自分ごと”になっていくんだなと。それが正解かどうかわかりませんが、僕はそんなふうにお芝居に取り組んでいます。

ーでは、劇中でも登場人物たちが「芝居とは何か?」という問いに答える場面がありますが、重岡さんにとって芝居とは?

 いろんなことを経験させていただく中で、一言で言うのはなかなか難しいな、とずっと思っていたんです。でも最近、ようやく「これかも」というものが見つかって。それが、「生きざま」です。自分が今までやってきたことや、人との出会いから生まれたもので勝負することになるので、芝居には「生きざま」が現れるな、と思って。

ーそうすると、お芝居にとって大切なのは、自分自身を磨き続けることでしょうか。

 そうですね。結局、未来は過去から作られるわけですから。それと、僕が常に言い続けているのが「健康第一」。仕事で十分なパフォーマンスを発揮するには、まずは食事や睡眠など、体調を整えて健康でいること。そうすると、心も健やかになり、結果的にいいパフォーマンスが発揮できるようになります。「健康第一」は、僕が20代からずっと言い続けてきたことですが、30代を迎えた今は「シン・健康第一」に進化しました(笑)。また、僕はアスリートに憧れているので、格闘家がリングに立つような気持ちでコンディションを整え、本番に備えようと思っています。そういう意味では、気持ちはアスリートと一緒です。

ーでは、この作品から重岡さんが俳優として得たものは?

 たくさんあります。いろんな人に出会えることが役者の仕事の魅力なので、そういう意味では、このメンバーでやれてよかったなと思います。やっぱりみんな、たくさんの現場を経験してきているだけあって、それぞれオンリーワンのものを持っているんですよね。だから、そばにいるだけでも「どんなことをするんだろう?」とわくわくするし、お芝居にも引き込まれてしまいます。逆に間宮くんが「一緒にやりたかった」と言ってくれたことも、僕の財産になりました。飯塚(健)監督からも刺激をたくさん受けましたし、いろんな収穫のあった作品です。

(取材・文/井上健一)

©2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社

『ある閉ざされた雪の山荘で』

1月12日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

配給:ハピネットファントム・スタジオ