-今回は、初老の謎の女性と年下の男の子の話でしたが…。
松田 これは、ラブストーリーとか、いろいろな解釈で見る方がいると思いますが、実はだまし合いの話なんです。主人公の文子は、もともとは詐欺師だったのかもしれない。お金を元手に何かを搾取したりしていたのかもしれない。だから、偶然かばんを忘れたと言ったのに、あの中に大金が入ったような封筒を持っている。また(佐藤)緋美くんが演じた土井の裏ストーリーも作りました。人殺しをした親に育てられて、親がずっと刑務所に入っているんです。それで、ずっと人殺しの息子と言われて、自分は何も悪いことはしていないのに迫害を受けていて、なかなかいい就職もできないという日々を送っている。そんな2人が、お金というキーワードで結びつくという話です。文子の方は、お金があると信じ込ませて、引っ張って、そこに恋愛みたいな空気を作っていくんだけど、実は、土井は土井でそのお金を盗みにいくという。ぱっと見、老女と若い男の人との恋愛模様みたいな空気が漂っているけどそうじゃないですよと。だから、深く読んでもらうと、いろいろなキーワードがあって、ちょっと謎の多い宝箱みたいになっています。
-原田さんは演じてみていかがでしたか。
原田 もしだますのだとしても、その時はだましていることは絶対に見せないし、全部が本当かもしれないし、全部がうそかもしれないというのが面白いと思ってやっていました。だけど、互いが何か一瞬ひかれ合うというのは真実な気がします。そこはすごく大事にしました。
松田 私の知り合いに、「『雨月物語』みたいだ」と言う人がいました。こちらから見るとこうだけど、あちらから見ると…。全部が現実ではないお化けの世界だったんじゃないかと。実は、17分版の作品もあって、それはさらにそういうことを強く感じさせるように作っているんですけど、MIRRORLIAR FILMSに収録するに当たり15分にしました。そういう裏ストーリーもあるので、長編で撮りたいですね。
-パチンコ屋を舞台にした理由は?
松田 パチンコって覚醒する場所、自分の現実を忘れられる場所だと思うんです。音とか色とか、何か不思議な世界に連れていってくれるからそこに長くいたいと思うんだろうなと。これは息子の友達の実話が基なんです。その人は実際にパチンコ屋で働いていたんです。それもあってパチンコという題材が面白いなと思いました。それに、やっぱりパチンコは日本独特の文化というか世界観なので、どこかの映画祭に出すとしても面白いと思いました。
原田 文子さんのせりふで、パチンコについて「『大当たり』って褒められるじゃない。あれがうれしいのよ」と言うのもすごく面白い。普段、全くそういうことがない生活をしている女の人だから。
松田 当たるとファンファーレが鳴るって、自分の人生にはそういうことはないじゃないですか。だからあのせりふを入れたんです。
-観客や読者に向けて、見どころも含めて一言ずつお願いします。
松田 今までの人生でやってきたいろいろなことが全部実った感じがしたので、この年齢になって作品が撮れたことは本当に幸せでした。たくさんの謎がある映画なので、ぜひそれを解読してください。いろんな解釈をして楽しんでいただきたいです。
原田 頭や理屈で考えるのでなく、言葉の解釈でもなく、映像のワンカットワンカットを体感してもらいたいと思います。体感することで、行間や五七五の言葉のないところが見えてくるみたいに、映像も語れる気がします。だから、いいのか悪いのかと、白黒をつける必要もないし、何かを味わってほしい。自分が映画の中に入って体感してほしいです。
(取材・文・写真/田中雄二)










