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【アイランダー通信 ~離島から考える】 都市でも楽しむ「島の味」

石川県舳倉島のお宅でいただいたイカ飯。平らげてしまった忘れられない一品

 港の食堂で食べた魚料理や、島で採れた食材を使った郷土料理。振り返ってみると、そういった「島の味」はしばしばその土地ならではの記憶と結びついています。潮風のにおいや船旅の時間も含めて、「島の味」は形づくられているのだと思います。もっとも、実際に島へ足を運ぶとなると、時間や距離の面でハードルを感じる人も少なくないかもしれません。

 今回は都市で楽しめる「島の味」について紹介します。そこは単に島の産品を買ったり、料理を食べたりするだけでなく、島の情報に触れ、人と交流することで、島旅への入り口を見つけることができる場です。

 その代表的な存在の一つが、東京・日本橋にある「離島百貨店」です。店内には全国の島々から集められた食品や酒、調味料、菓子類などが並び、普段なかなか目にすることのない逸品に接することができます。商品棚を眺めているだけで、まるで小さな島旅をしているような気分になります。飲食スペースでは島の食材を使った料理を味わうこともできます。

 興味深いのは、この場所が単なる飲食店・物販店では終わっていないことです。店員との会話の中で島の最新情報を知ったり、お客さん同士が「以前この島に行ったことがある」と話し始めたりする光景も珍しくありません。島に関するパンフレットやイベント情報も置かれており、「島への入り口」という役割も果たしています。

 また、都市にある、島出身者や島に縁のある人たちが営む飲食店、島の食材を使っている飲食店にも注目しています。手元で継続して情報を収集しているのですが、なかなか公開するまでには至ってはいません。例えば、新宿の「青ヶ島屋」は、私自身よく利用している店の一つです。伊豆諸島の焼酎を飲みながら明日葉、くさやなどの料理を味わい、店員さんと会話をするのは、東京にいながら島の空気に触れられる貴重な時間です。島にあまり馴染みのない友人を連れて行くことも多く、そこから実際の島旅の話へとつながることもあります。

 こうした場所の存在は、島の情報発信拠点として、とても重要な意味を持っていると感じています。都市での小さな出会いが、新たな交流人口や関係人口につながっていくのです。さらに、すでに島との接点を持っている方にとっても、島を「思い出す」、島と「つながり続ける」場としても機能しているはずです。東京を含む都市の中に点在する「島の味」は、島と都市をゆるやかにつなぐ港のような存在なのかもしれません。そこで味わう一皿は、単なる「ご当地グルメ」ではなく、人々の意識を海の向こうの島へ静かにいざなっていってくれると信じています。

益財団法人日本離島センター 調査係長 佐伯直樹(さえき・なおき)


日本離島センターとは?

 離島振興の推進を目的に1966年に設立。今年2月に設立60周年を迎えた。現在、北海道礼文町から沖縄県与那国町まで、離島振興関係5法の対象有人島を有する全国136市町村で組織している。広報宣伝、研修活動、島づくり活動への助成事業などを展開。全国の島々が一堂に会するイベント「アイランダー」の開催をはじめ、季刊の雑誌『しま』や、離島に関する各種データを掲載する『離島統計年報』などを発行している。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.23からの転載】