まめ学

行動制限の緩和、物価上昇を受けたシニアは貯蓄を減らして消費に回す傾向 「シニアの生活意識調査2022」

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 ソニー生命保険(東京)が今年8月に実施した「シニアの生活意識調査2022」によると、新型コロナウイルスの感染状況が一服したためか、シニア世代ではこれまで増やしてきた貯蓄への出費を再び消費に回す傾向があることが明らかになった。

 現在の楽しみを「消費」と回答したシニアに、貯蓄に対する1カ月の出費を聞いたところ、平均額は5.2万円となった。過去の平均額――4.7万円(2020年)、5.8万円(2021年)と比べると、貯蓄額は減少した。背景には「新型コロナウイルス関連の行動制限の緩和による消費意欲回復や、物価上昇に伴う生活費増加があるのでは」(ソニー生命保険)とみられている。

 「人々が徐々に以前の日常に回帰しつつある様子を反映した結果」として、ソニーフィナンシャル・グループ金融市場調査部アナリスト森本淳太郎氏が挙げたのが、アウトドアや人々との触れ合いに関連する調査項目の回答割合の上昇である。

 シニアは、何を現在の楽しみとしているのか。全国のシニア(50~79才)の男女1,000人(全回答者)に、現在の楽しみを聞いたところ、1位「旅行」(45.3%)、2位「テレビ/ドラマ」(38.6%)、3位「映画」(29.5%)、4位「グルメ」(28.5%)、5位「読書」(26.6%)という結果だった。男女ともに「旅行」が1位だった。4位に男性は「スポーツ」、女性の4位には「健康」が挙げられるなど、根強い健康志向もうかがえた。

 では、現在の楽しみのためにどのくらいのおカネをかけているのか。「旅行」と回答したシニアに、旅行への1カ月の出費を聞いたところ、平均額は2.4万円だった。これは昨年、おととしと同額。また、現在の楽しみを「スポーツ」としたシニアの1カ月の出費は1.2万円となり、2020年の0.9万円、2021年の1.1万円から緩やかな上昇傾向をみせた。

 「子ども/孫」を楽しみとするシニアの割合が上昇し、孫がいるシニアに、この1年間でどのようなことにおカネを使ったかをたずねたところ、1位が「お小遣い・お年玉・お祝い金」(67.2%)、2位「一緒に外食」(43.5%)」、3位「おもちゃ・ゲーム」(39.9%)、4位「衣類などファッション用品」(30.8%)、5位「本・絵本」(26.9%)との回答だった。

 森本アナリストは「今夏は行動制限が緩和され、孫との外食や旅行・レジャーに出費するシニアが増えたのではないでしょうか」とコメントした。

 この1年間に孫のために出費をしたシニアに、その金額を聞いたところ、「5万円~10万円未満」が22.1%、「3万円~5万円未満」が21.4%、「10万円~20万円未満」が15.0%という結果だった。平均額は11万9,413円で、昨年の10万4,682円から大幅増加となり、「行動制限緩和後、“孫消費”が拡大傾向」にあることを示した。

 孫がいるシニアに「今後、孫とどのようなことをしたいと思うか」と聞いたところ、1位「外食」(50.0%)、2位「旅行」(44.5%)、3位「会話」(39.6%)、4位「公園で遊ぶ」(32.8%)、5位「散歩」(29.5%)と、アウトドアが戻ってきた感じだ。

 今後の見通しについて森本アナリストは「今後も物価の上昇に歯止めが掛からなければ、生活費が増加し、『シニアの楽しみ』のために使えるお金も減ることになります。インフレに影響を与える、ウクライナ情勢や日銀の金融政策には今後も要注意です」と語る。

 調査では、シニアの大多数が、今のパートナーとこの先のシニアライフを楽しみたいと希望していることがみえてきたが、夫婦観には男女間で大きなギャップがあった。生まれ変わっても今の相手(配偶者)と結婚したいかとたずねたところ、男性では「そう思う」が72.1%、「そう思わない」が27.9%で、前向きに考えている人のほうが多かったのに対し、女性では「そう思う」が50.5%、「そう思わない」が49.5%と拮抗する結果となった。

 「男性は『配偶者が家庭を支えてくれた』という意識が強い一方、女性は『自分だけの時間が欲しかった』と考えているのかもしれません」と森本アナリストはいう。

 また、全回答者に「好きな芸能人」を聞くと、1位は明石家さんまと所ジョージ、3位が綾瀬はるかと吉永小百合だった。男性の首位は明石家さんま、女性では天海祐希。

 「今年、心に響いた歌」を聞くと、1位が中島みゆきの「糸」、2位がNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」の主題歌だった三浦大知の「燦燦」、3位がAimerの「残響散歌」と遊里の「ドライフラワー」、5位がNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の主題歌として使われたAIの「アルデバラン」となった。

 男性回答の首位は「鬼滅の刃 遊郭編」のオープニングテーマ「残響散歌」であったのに対し、女性回答の1位はロングセラー「糸」だった。

 ソニー生命保険による「シニアの生活意識調査」は今年で10回目。調査は、2022年8月2日・3日の2日間、全国のシニア(50~79才)の男女にインターネットで行った。有効サンプル数は1,000人。