-水野監督の演出で印象に残ったことは。
コメディーはコメディーだと思ってやると笑えないということを教えていただきました。「コメディーの要素があるせりふを真面目に言ってみて。それが面白いんだよ」と。それはすごく勉強になりました。私はどうしても笑わせようとするので、そういうのが少し余計だったりもするんだなと気付きました。逆にコメディーっぽくしない方が笑えたりするんですよね。
-役作りはどのように。
私が今まで演じてきた役は、明るいものにしても暗いものにしても、すごく特徴があったんです。だから、会ったことがある誰かを参考にしているところがありました。「こんな人いたよな」という感じで、ちょっと物まねに近い形で芝居をするというか、役作りをする。そこに自分のスパイスを加えていく作業をしていきました。でも、小宮の場合は参考にする人がいなかったんです。なので、今回は不思議な感じで、何を考えているのか分からない。ちょっと怪しくもあるみたいに演じました。
-高橋文哉さん、染谷将太さん、田中圭さん、共演した皆さんの印象は。
文哉くんは、撮影中はすごく少年っぽい感じがして、かわいい男の子というイメージだったんです。でも、映画が終わってから、すごく色気が増して大人になったなと思いました。田中圭さんはムードメーカーです。圭さんがいると現場がすごく明るくなるし、お話がお上手だし、楽しいです。染谷さんは、すごく言葉選びが丁寧で、分からないことを教えてくれそうな、頼れる感じの方。それぞれキャラクターが違っていて楽しかったです。
-最近は、『春画先生』(23)や大河ドラマ「どうする家康」(23)などでいろんな役を演じていますが、その中でもこの映画は他とは違う感じでしたか。
役作りというか、役への寄り添い方が違ったかもしれないです。あまり考え過ぎずに演じたところはあるかもしれません。今までのようなアプローチの仕方だと多分ややこしくなるんです。この映画で私が演じた役って。もっと言いたいけれど、ネタバレになるので言えませんが(笑)。いろいろな役作りができて楽しくて、ワクワク感があったことが新しかったのかもしれないです。でも、いろいろやったことは言えないんですよね。だからもどかしいです。
-では最後に観客に向けて一言お願いします。
この映画は、一度見ただけでは分からないと思います。隅々までじっくりと見て理解する。何度も見ることで面白さが増すと思います。こんなところにこんなヒントあったんだみたいに。何回も繰り返して見て、いろんなことに気付いて楽しんでほしいです。
(取材・文・写真/田中雄二)