ふむふむ

【キウイの本場訪ねて】<上> 「最高の品質を届けたい」 生産から出荷まで、携わる人たちの込められた思い

ニュージーランドのタウランガ地区にあるスーパーマーケット店内

 スーパーなどのフルーツ売り場に、キウイが目立ち始めた。切り口が緑色(グリーンキウイ)や、黄色(サンゴールドキウイ)のキウイの上に「Zespri」(ゼスプリ)」と印字されただ円形のシールが張られている。少し前に店頭に出回っていた、期間限定の赤色(ルビーレッドキウイ)にも。

 南半球に位置し、日本から約9千キロ弱のニュージーランドから船で運ばれたものだ。同国に本社を置き、世界各国にキウイを輸出・販売しているゼスプリインターナショナルグループ(以下、ゼスプリ)が手がけている。

 今回、キウイの本場ニュージーランドを5日間の予定で訪れた。現地の様子を3回シリーズで報告する。1、2回目はキウイに携わる人たちの思いを、最終回はオークランド大学の研究者による健康効果についての最新研究や、キウイ料理のレシピなどを紹介する。

果樹園を案内してくれたロシャさん

 

▼「1番良いキウイを日本に」

 ニュージーランドは、クック海峡を挟んだ北島と南島の二つの大きな島を中心に構成される。人口は約522万8千人で、首都はウェリントン。温暖で、雨量も1年を通して多い海洋性気候なため、農業や牧畜業に適している。季節は日本の逆で、日中は太陽の日差しがまぶしいと感じるが、朝夕は急に涼しくなり、秋の入り口といった感じだった。

 今回の取材先は、北島の北西に位置するオークランド周辺だ。現地の生産者、ゼスプリの品質管理者、選果従事者・・・、キウイという小さな果実に、それぞれの役割を担う人たちが愛情を込めて携わっている姿を見ることができた。

 「日本には品質が1番良いキウイを輸出しています」と自慢げに話すのは、北島のベイ・オブ・プレンティ地方の中心都市、タウランガで果樹園を経営しているアンドレ・ロシャさん。「キウイにはクラス分けがあり、ニュージーランド国内で流通しているのはクラス2のものです」と笑った。ロシャさんはスイス出身で、結婚などを機にニュージーランドに移住したという。

 ロシャさんが所有する果樹園は、グリーンキウイ、サンゴールドキウイをそれぞれ約2.5ヘクタール栽培し、収穫後はゼスプリに全量を納品している。ロシャさんはキウイ栽培について「キウイの成長を見ながら、どのタイミングで何をすべきかを考えながらやっています。しかも、毎年毎年、(気候状況などによって)果樹園の状況は変化しているため、生育状況などを丁寧に観察する力が求められます」と強調した。

 今年の出来栄えについては「風が強かった昨年に比べ、今年はクオリティー、大きさとも全体的にいいものができた」と語った。

 ニュージーランドでのキウイフルーツの栽培作業は冬から始まる。果実になるまでには約9カ月間を要する。冬の時期に古い枝を切りロープでまとめ、風害対策を行う。春になると白やピンクがかった色の花が咲き、ミツバチを果樹園に放って受粉を促す。夏は太陽と雨が成長を促進させてくれるが、枝が病気にかかっていないかどうか、丁寧に観察しなければいけない。収穫の秋には地面の雑草を刈るなど、手入れを怠らない。

果樹園で、キウイを収穫する様子を説明するゼスプリ社員

 

▼手で1個ずつ収穫

 ロシャさんの果樹園に移動した。敷地のあちこちに背の高い防風林が植えられ、風害を防いでいた。地面から約160センチ上に、成長した多くのキウイが枝からぶら下がり、収穫の時を待っていた。ただ、比較的身長の高いニュージーランド人にとって、収穫作業は容易ではないという。

 というのも、機械は一切使わず、大量のキウイを1個ずつ手作業で収穫しなければいけないためだ。腰を少し曲げ、出来栄えを見極めながら一つずつ手でもぎ取り、前に抱えた大きな箱に入れていく。

 収穫の様子を説明してくれたゼスプリの社員は「キウイは傷つかないように、両手を使ってもいで、箱に投げ込むのではなく、一つ一つ丁寧に置いていかないといけない」と笑いながら話した。ロシャさんによると、収穫で忙しいときは30~40人のピッカー(収穫する人)が必要で、その際はゼスプリのサポートを受け、人材を派遣してもらっているという。

 日本国内でもキウイは栽培されていることについて、ロシャさんは「日本では優秀な栽培農家でも1ヘクタール当たり約30トンの収穫量といわれています。ニュージーランドは平均で45~50トン、トップクラスになると60~70トンの収穫量になります」と指摘した。その上で「私たちの技術が日本よりも優れているということではないでしょう。ニュージーランドの火山帯の土壌、たくさんの日光の量、適度な雨など、キウイが育つ恵まれた条件のおかげなのです」と謙虚に語った。

キウイ栽培が盛んなテ・プケにある看板

 

 キウイは、ニュージーランドの自然が育んだ産物でありながらも、ロシャさんをはじめ生産者が多くの手作業をこなしながら果実という具体的な形につくりあげていく姿は、モノをつくる原点ではないか、と痛感した。

 しかも、キウイ作りは、生産者の知恵と勘だけではなく、ゼスプリの独自の「栽培→収穫・残留農薬検査→トレーサビリティー→店頭」という各工程を網羅する包括管理が確立されている。そのため、キウイの収穫を見極めるタイミングも、生産者が勝手に判断するのではなく、ゼスプリの厳しい基準をクリアしたものだけが収穫されるよう、「最高の品質」を目指し決められている。

 次回は収穫されたキウイが運び込まれる選果場、品質管理をするためにキウイの成熟度を調べる研究所などの様子をお伝えする。

(つづく)