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「ジンを日本の日常酒に」 サントリー、食中酒戦略で市場拡大狙う

「翠(SUI)」の新CMに登場する杉咲花さん。居酒屋の店員としてジンのおいしさに気付く

 日本の食卓にあまりなじみがなかったジンが浸透してきた。近年、ハイボールと同じように食中酒として飲まれるようになり、市場は急拡大している。サントリーは2月18日、今後もジン市場が成長するとして東京都内で「ジン戦略説明会」を開催。同社の代表ブランド「ROKU〈六〉」と「翠(SUI)」について、工場の設備を増設するなど生産を強化する方針を打ち出した。

ソーダ割りを提案して人気となった「翠(SUI)」と、海外60カ国以上で販売している「ROKU〈六〉」

 

 ▽バーから居酒屋へ

 サントリーは、1936(昭和11)年に最初のジンを発売。約80年後の2017年に6種類のボタニカル和素材を使用したプレミアムブランド「ROKU〈六〉」を開発し、国内とともに海外で人気があるジン市場に本格的に乗り出した。その後、ジントニックやマティーニ、ギムレットといったカクテルのイメージが強いジンをソーダ割りにして食事と一緒に飲んでもらおうと20年に「翠(SUI)」を発売。22年の「翠ジンソーダ缶」投入でジン市場が大きく成長した。

 説明会には塚原大輔スピリッツ本部長と矢野哲次・大阪工場長らが登壇。塚原氏は「従来のジンはバーで飲むイメージが強かったが、『翠』で居酒屋や自宅で気軽に楽しむ人が増えた」と話し、国内ジン市場が24年までの5年間で約3.5倍になったと説明した。サントリーによると、若年層ほどジン飲用率が高いといい、20代のお酒を飲む人の中で、ジンソーダ缶を飲む人が26.9%と4人に1人がジンに親しんでいる。

塚原大輔スピリッツ本部長。「ROKU〈六〉は海外ではバーで飲まれているが、日本では特別な日の食中酒としても楽しんでほしい」

 

 ▽市場規模はウイスキーの4%

 塚原氏はジン市場の世界と日本を比較し「世界ではウイスキー市場の約16%がジン市場といわれるが、日本ではウイスキー市場の約4%しかない」と指摘し「日本はさらに大きなポテンシャルがある」とした。こうしたことから、25年は主力商品の「翠(SUI)」をリニューアルし「ジンを日本の日常酒に」とする戦略を展開する。

リニューアルでは原材料の配合を変え「より一層すっきり爽やかな味わいを実現した」という

 

 ▽新メッセンジャーに杉咲花さん

 「翠」ブランドの新テレビCMとして俳優の杉咲花さんと中島歩さんを起用し、居酒屋や自宅で食事とともに飲む酒をアピールする。説明会に合わせて開いた新CM発表会に登場した杉咲さんは「今までジンを飲む機会が少なかったが、飲んでみてすっきりとして後からユズとか緑茶など“和”を感じる」と話した。

会場で「翠ジンソーダ」を作る杉咲さん。「たっぷり入れた氷に触れないように注ぐのがポイントです」

 

 ▽季節限定で「ROKU〈六〉」をアピール

 高級ブランドの「ROKU〈六〉」に関しては、季節限定として春には桜の香りを強調した「ROKU〈六〉SAKURA BLOOM EDITION」(2月25日発売)と、夏はお茶の味わいの「ROKU〈六〉NORYO TEA EDITION」(5月13日発売)を投入する。また、2025年大阪・関西万博に合わせた「ROKU〈六〉」限定商品を3月18日に発売する。

ブランド初の限定品として2024年に発売した「ROKU〈六〉SAKURA BLOOM EDITION」が再登場する

 

 大阪工場(大阪市)の矢野工場長は、生産設備増強と見学ができる「スピリッツ・リキュール工房」の新設で計65億円を投資することを明らかにした。矢野氏は「大阪工場のジン原料酒の生産能力は2倍になる」と話した。

「ものづくりの魅力を伝える見学ツアーを2026年春から始める」と話す矢野哲次・大阪工場長

 

 サントリーは「翠(SUI)」を居酒屋や自宅での食中酒としての飲用をアピールしているが、2月13日に食中酒としてトリスハイボールを打ち出したばかり。塚原本部長は「食中酒市場はまだまだ大きい。ハイボールも含め、多様な提案をしていきたい」と強調した。サントリーは2030年のジンの国内市場規模を24年の約1.8倍と想定。「シェア約8割を目指す」と居酒屋や食卓での日常酒として広がることに期待をかけている。