カルチャー

日本におけるレイシズムを知る一冊 その本質と危険性を考える

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 例えば旅先で、「アジア人」であるがためにののしられたり嫌がらせをされた経験を持つ人は、少なくともその時点でレイシズムの理不尽さを実感したり考えたりする機会に恵まれる。さらに進んで日本の中にある人種差別まで熟考するのは、身近に問題が起きないとなかなか難しいかもしれないが、それでも昨今、ヘイトスピーチなどが報道される機会も増え、議論の俎上(そじょう)にのぼることが多くなった。そこでこの問題をじっくり考えてみるための一冊、『日本にレイシズムがあることを知っていますか?』(原由利子著、合同出版・東京)が7月29日に刊行される。

 人間には人種や民族、出自などによって優劣があり、その優劣は運命的で不変という“神話”。植民地支配や搾取、戦争を正当化してきた要因の一つがこの「レイシズム」だが、日本でも在日外国人や被差別部落、アイヌ民族、琉球・沖縄の人々などについての歴史をひもといていくと、マイノリティーの人々への差別は数えきれないほど多く、そしてまだまだ現在する重要課題だ。

 そこで日本社会にある差別の実態や、マイノリティーの人々がどう声をあげ、行動してきたのかを、国際人権NGO「反差別国際運動(IMADR)」元事務局長の著者がまとめたのがこの本。レイシズムの本質と危険性、国連、政府、市民の役割を知り、レイシズムのない社会に向けた行動を考えるヒントが見つかる一冊だ。税込み1,760円。