SDGs

「2022 GP環境大賞」等で東京都ほか36企業・団体を表彰 「小山薫堂×ハービー・山口」両氏の心打つトークショーも

「GP環境大賞ゴールドプライズ」を受賞した東京都の小池百合子知事(中央)。写真右は日印産連の北島義斉会長、写真左はグリーンプリンティングPR大使の小山薫堂氏。
「GP環境大賞ゴールドプライズ」を受賞した東京都の小池百合子知事(中央)。写真右は日印産連の北島義斉会長、写真左はグリーンプリンティングPR大使の小山薫堂氏。

 SDGsが広く認知されるようになり、環境問題に熱いまなざしが注がれている。印刷産業では、業界を取りまとめる一般社団法人 日本印刷産業連合会(東京、通称「日印産連」)が、2006年に「グリーンプリンティング(GP)認定制度」を創設。いち早く地球環境への負荷低減に取り組んできた。同認定制度は、環境に配慮した自主基準に基づき、基準を達成した工場・資機材の認定、認定工場が製造した印刷製品へのGPマーク表示などを行うもの。

 日印産連では2015年以来、このGP認定制度に対する深い理解と同制度の積極的な活用が認められる企業や団体に、「GP環境大賞」「GPマーク普及大賞」「GP資機材大賞」を授与しており、2022年度の各賞の表彰式が、10月19日に都内で開催された。同日は、小山薫堂氏(放送作家・脚本家)とハービー・山口氏(写真家)によるトークショー「印刷と私」も併せて開催された。

受賞のあいさつを述べる小池百合子東京都知事。
受賞のあいさつを述べる小池百合子東京都知事。

 表彰式では冒頭、日印産連の北島義斉(きたじま・よしなり) 会長があいさつ。「GP認定制度の基準は、近年、社会の共通目標となっているSDGsの各ゴールやターゲットにも連動する。顧客からのGP認定工場への印刷発注は、サプライチェーンを通じたSDGs達成に寄与するものと確信している。日印産連はこうした取り組みによって地球環境の保全をさらに推進していきたい」と述べた。

 各賞の表彰に移ると、初めに、「GP環境大賞」を3回以上受賞した企業・団体を表彰する「GP環境大賞ゴールドプライズ」が「東京都」に贈られた。「東京都」を代表して壇上に立った小池百合子東京都知事は、「東京都は環境問題についてトップランナーであるべき。都のVOC(揮発性有機化合物)対策では印刷業界にも大変ご協力をいただいた。気候変動に対しては一人一人が主体性を持って環境負荷の低減に努めていくことが重要。都民・事業者それぞれが連携して行うことが成果につながる。気候変動、エネルギー危機、食糧危機、いろんな危機があるが、皆さんとともにピンチをチャンスに変えていきたい」と受賞の弁を語った。

「GP環境大賞」「GP環境準大賞」受賞企業・団体の代表者の皆さん。
「GP環境大賞」「GP環境準大賞」受賞企業・団体の代表者の皆さん。

 続いて「GP環境大賞」を5社が受賞し、GPマークを積極的に提案している工場を表彰する「GPマーク普及大賞」は5社が、GPマーク認定資機材を多く提供しているメーカーを表彰する「GP資機材環境大賞」は2社が受賞した。各賞の準大賞を合わせると、この日、36の企業・団体が表彰された。

「GPマーク普及大賞」「GPマーク普及準大賞」受賞企業の代表者の皆さん。
「GPマーク普及大賞」「GPマーク普及準大賞」受賞企業の代表者の皆さん。
「GP資機材環境大賞」受賞企業の代表者の皆さん。
「GP資機材環境大賞」受賞企業の代表者の皆さん。

 表彰式の最後に、2016年からグリーンプリンティングPR大使を務め、この日、2部門のプレゼンターも担当した小山薫堂氏があいさつ。「元環境大臣に環境の賞を手渡すという貴重な体験をさせていただき感動しました」と会場をなごませた後、「クライアントと製造者を一緒に表彰するこれらの賞は、作り手と使い手が手を携えて同じ方向を向く素晴らしい賞。一つの賞を設定したことでみんなが同じ方向を向き始め、使い手も巻き込んで一つの業界を変えていく。この仕組みはさまざまな業界で応用されるべき。他の業界でもGP環境大賞のような試みが広がっていけばもっとよい未来に向かっていくのではないか」と締めくくった。

グリーンプリンティングPR大使を務める小山薫堂氏。
グリーンプリンティングPR大使を務める小山薫堂氏。

 式の後半では、2016年からグリーンプリンティングPR大使を務める小山薫堂氏と、写真家のハービー・山口氏が登場。「印刷と私」と題してトークショーを行った。

 冒頭、山口氏は「われわれ写真家にとって最終形態の写真集が印刷によって残るのは心強い限り。写真家は撮る際に魂を入れる。印刷をする方が魂を入れると魂のコラボレーションが生まれる。印刷がオリジナルを超えるようなクオリティーを作ってくれたら素晴らしい」とコメント。

「被写体の方の明日の幸せを祈ってシャッターを切る」と語る写真家のハービー・山口氏。
「被写体の方の明日の幸せを祈ってシャッターを切る」と語る写真家のハービー・山口氏。

 写真の撮影が大好きだという小山氏が、「ハービーさんの作品は素敵な写真が多い。よくこんな瞬間を捉えられるなと思うんですが、どうすればああいう場に出くわすんですか?」と質問。山口氏の答えは「人間力を鍛えること。大谷翔平選手はグラウンドでゴミを拾うでしょ。科学では解明できない。いい写真を撮るんだという情熱に応じてシャッターチャンスの数は増える」という意外なもの。

 山口氏は、有名になる前のダイアナ妃、「カルチャークラブ」のボーイ・ジョージ、パンクバンド「クラッシュ」のジョー・ストラマー、F1ポルトガルグランプリでリタイアした際のアイルトン・セナなど、運よく撮影できた実例を紹介。「自分が撮るのは99%人物写真。人物写真を撮る最高のテクニックは、『被写体の方の明日の幸せを祈ってシャッターを切る』という精神」と秘訣も明かした。

有名になる前の若き日のダイアナ妃を撮影したときはこれぐらいの距離だったと話すハービー・山口氏。
有名になる前の若き日のダイアナ妃を撮影したときはこれぐらいの距離だったと話すハービー・山口氏。

 さらに、偶然乗ったタクシーの運転手の写真を撮らせてもらったら実は無名のパンクバンドのドラマーで、山口氏との出会いがきっかけで武道館ライブが満杯になった例や、新幹線で偶然、前の席に座った女性を撮らせてもらったら、彼女のSNSのフォロワーは数人しかいなかったのに、その写真が120万人に見られた。しかもその女性は実はショパンコンクールに出たピアニストだった。などの驚きのエピソードも紹介した。

 小山氏が「印刷のことをすっかり忘れてますね(笑)」と話を印刷に戻すと、山口氏は、印刷も(撮影と同様に)いかに魂を込めるかだと応じた。「仕事だから印刷してますではなく、ライターさんが一所懸命に書いたこの印刷物が世の中に伝わるといいなと思って印刷・製本する。この本が幾万の人の心を豊かにする一助になるんだ、一過性のものではなくて永遠に琴線に触れるコンテンツを作るんだと思いを乗せること」と魂を込めて働くことの重要性を力説。その熱さに来場者も心を奪われていた。

※受賞企業・団体

【GP環境大賞ゴールドプライズ】

東京都

【GP環境大賞】

<一般印刷の部>

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、株式会社ジェイアール東日本企画、東武鉄道株式会社、株式会社ホテルショコラ

<パッケージ印刷の部>

株式会社あわしま堂

●2022GP環境準大賞

<一般印刷の部>

社会福祉法人恩賜財団済生会、日本航空株式会社、株式会社ホンダカーズ横浜、株式会社ホンダコムテック、三鷹市

<パッケージ印刷の部>

国分グループ本社株式会社、株式会社旬菜デリ、竹下製菓株式会社、プレミアアンチエイジング株式会社、株式会社マルキン海産、レインボー薬品株式会社

【GPマーク普及大賞】

<オフセット印刷部門>

NTT印刷株式会社、株式会社笠間製本印刷、六三印刷株式会社

<グラビア・シール・スクリーン印刷部門>

株式会社北四国グラビア印刷

<製本・表面加工部門>

株式会社NACAMURA

●2022GPマーク普及準大賞

<オフセット印刷部門>

伊藤印刷株式会社、岩岡印刷工業株式会社、株式会社大川印刷、精英堂印刷株式会社、株式会社太陽堂印刷所、谷口印刷株式会社、株式会社文伸、丸正印刷株式会社、稚内印刷株式会社

<グラビア・シール・スクリーン印刷部門>

賀谷セロファン株式会社、株式会社巧芸社、東包印刷株式会社

【GP資機材環境大賞】

<資材部門>

コダック合同会社

<機材部門>

コニカミノルタジャパン株式会社