食育推進の23団体が受賞　農水省・第7回食育活動表彰

　農林水産省はこのほど、全国の優れた食育活動を顕彰する「第7回食育活動表彰」の受賞23団体を発表した。最高評価の「農林水産大臣賞」には、熊本市食生活改善推進員協議会（熊本県）、シェアリンク茨木（大阪府）、コミュニティカフェ・カフェゴッコ（富山県）、アグリバトンプロジェクト（AGRI BATON PROJECT、茨城県）、東京ガス（東京都）の5団体が選ばれた。いずれも息の長い地道な食育活動が評価された。

　「食生活改善推進員の部」で受賞した熊本市食生活改善推進員協議会は1993年発足。高校生対象に郷土の料理を15年以上教えるなど郷土の食文化を若い人たちに伝える活動を展開する。近年は郷土料理の「いきなり団子」の作り方を動画配信するなど「デジタル食育」にも着手した。「（郷土料理を習った）高校生たちが料理を楽しむ大人」になってほしいと願っている。

　「食育推進ボランティアの部」で受賞したシェアリンク茨木は2010年、子育て支援から始まった団体。災害跡地を活用した「みんなの畑」での農作業を通じて、孤立しがちな住民同士のつながりをつくり、収穫祭や自炊塾を開いて地元食材への関心を高めるなど、食と農を起点にした「ぬくもりの連鎖」を次世代に伝える活動をしている。「これからも地域の皆さんと楽しくやっていきたい」と受賞を喜んでいる。

　「教育等関係者の部」で受賞したコミュニティカフェ・カフェゴッコは無農薬の地元農産物のみを食材とするカフェレストラン。地場産食材にこだわった料理実習や農業体験・出張朝市を通して生産者と消費者の橋渡しをする活動もしている。広野美代子代表は「地元食材の新鮮さやおいしさに気付き、生産農家の思いや悩みに関心を寄せる人が一人でも増えるように、今後も地域の方々と一緒に取り組みを続けたい」と話す。

　「農林漁業者等の部」で受賞したアグリバトンプロジェクトは、農業の魅力や食の大切さを伝える自作絵本の読み聞かせ活動を通じて、食と農への関心を高める取り組みをしている。絵本は生産者自らが農業の魅力や自身の農産物の魅力を伝える際のツールとしても利用する。絵本には農業体験可能な農場を紹介するウェブサイトなどを確認できるQRコードも掲載。新規就農につなげる活動も展開する。

　「企業の部」で受賞した東京ガスは、子ども料理教室をはじめ子どもから大人、シニア世代まで幅広い世代を対象に「100年以上前から炎の調理を通じて食の楽しさを伝える」活動を展開。2014年からは、外部有識者を入れた「環境に優しい食育協議会」を設立して、学校や食の関係者など食に関心のある方々に向けて定期的なシンポジウムを開催する。現在は、次世代育成や健康長寿などの課題解決に向けた食育活動も推進している。

　農林水産大臣賞以外の受賞者は次の皆さん。

　【食生活改善推進員の部】消費・安全局長賞＝備前市栄養委員会（岡山県）、鹿島市食生活改善推進協議会（佐賀県）
　【食育推進ボランティアの部】消費・安全局長賞＝かけはしの会（長野県）、東金市食生活改善会（千葉県）、京津畑自治会（岩手県）▽審査委員特別賞＝沖縄大学管理栄養学科子ども食堂サポートチーム（沖縄県）
　【教育等関係者の部】消費・安全局長賞＝劇団からっぽ大作戦（宝塚市教育委員会、兵庫県）、きょうと食育ネットワーク（京都府）、NPO法人劇場創造ネットワーク（東京都）▽審査委員特別賞＝一般社団法人和食文化国民会議（東京都）、富士文化幼稚園（愛知県）
　【農林漁業者等の部】消費・安全局長賞＝平塚市漁業協同組合（神奈川県）、大地のメグミ（MEGUMI、北海道）▽審査委員特別賞＝わかやま農業協同組合やろう会（和歌山県）
　【企業の部】消費・安全局長賞＝明治（東京都）、カゴメ（東京都）、日本アクセス（東京都）▽審査委員特別賞＝日本マクドナルド（東京都）

　2016年度から始まり今年7回目を迎えた今回の食育活動表彰は推薦、自薦合わせて180件の活動事例を審査した。審査委員長の中嶋康博・東京大学大学院教授は「今年度は審査委員特別賞を新たに設け、アイデアあふれるユニークな取り組みを表彰することができた。家庭や学校、保育所などの教育現場、地域で食育のさらなる推進と新たな食育への挑戦が起こることを祈念している」と講評した。

　表彰式は6月24日、富山市の富山産業展示館で開く「第18回食育推進全国大会inとやま」の会場で行う。