近年、全国で豪雨による浸水被害が相次ぎ、都市の排水インフラが限界を迎えつつある。福岡大学では、豪雨の実態と対策を多角的に伝える企画を開始し、その初回として工学部・渡辺亮一教授が都市の水害対策の要点を語った。
都市の排水を支える主役は下水道だ。雨水は屋根から雨どいを通り、下水管へと流れ、15分以内には近くの河川へ排水される。福岡市では総延長約7300kmの下水管が豪雨時に大量の雨水を処理し、街を守っている。しかし近年、道路冠水や田畑の水没が頻発。背景には、従来の整備基準(1時間52.2mm)を大きく上回る豪雨の増加がある。2025年には宗像市で1時間110mmを記録し、甚大な被害が出た。
では、下水管を太くすれば解決するのか。渡辺教授は「現実的ではない」と指摘する。理由は二つ。第一に、河川の流下能力が追いつかず、結果的に氾濫を招く可能性があること。第二に、福岡市の下水道普及率は99.7%に達し、既存管の総取り換えには莫大な費用と時間が必要となる点だ。そこで重要となるのが、雨水を“すぐに下水管へ流さない”という発想である。雨水を一時的に貯めたり、地中へ浸透させたりすることで、下水道への集中を防ぐのだ。
この考え方を後押しするのが、国土交通省が2022年に示した新方針「流域治水」だ。流域に暮らす全ての人が主体となり、民有地にも水害対策施設を設置できるようになった。福岡大学は七隈川流域の約10%を占める立地を生かし、福岡市と協力してキャンパス内に雨水貯留施設を整備することを決定。6月には連携協定を締結した。
ラグビー場西側のグラウンドには、家庭用浴槽約7000杯分(約2,000立方メートル)の雨水を貯められる施設を設置。下水管の入口を絞ることで豪雨時に2000~3000トンの雨水を一時的に受け止める仕組みだ。さらに、渡辺教授が開発した「トース土(ど)」を使うことで、貯留後も速やかに排水し、グラウンドとして利用できる状態に戻せる。トース土は団粒化によって浸透性を高めた土で、福岡大学サッカー場や城南高校でも採用されている。
では、私たちができることは何か。渡辺教授は「雨水を下水管に入れない工夫を」と呼びかける。庭の一角に浸透性の高い土を使ったスペースを作り、雨どいの水を地中へ導く方法は効果的だという。都市では雨水がほとんど地中に浸透しておらず、地下水位が低下し海水が内陸に侵入する例もあるほどだ。住民が雨水を浸透させる取り組みを広げれば、地下水が蓄えられ、街の気温緩和にもつながる。
「流域治水は住民全員が当事者」。高台に住む人も含め、地域全体で小さな行動を積み重ねることが水害軽減への近道だ。まずは自宅周辺で雨水がどのように流れるか観察することから始めてみたい。








