まめ学

首都圏から地方への企業移転が続いた2022年上半期 帝国データバンクの「首都圏・本社移転動向調査」で明らかに

首都圏から地方への企業移転続く、2022年は2年連続の「転出超過」見込み
首都圏から地方への企業移転続く、2022年は2年連続の「転出超過」見込み

 コロナ禍で売り上げが減ったことで、多くの企業がオフィス賃料の安い地方に目を向けたこと、テレワークの浸透など働き方が変化し、それが定着しつつあることなどを背景に、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)から地方への企業移転が続いている。

 信用調査会社・帝国データバンク(東京)の「首都圏・本社移転動向調査」によると、2022年1~6月に判明した、首都圏から地方へ本社を移転した企業数は168社に上った。

 これまでに首都圏から地方への拠点分散化が進んだのは、バブル経済崩壊後の1990年代や2008年のリーマン・ショック後など、経済環境が悪化した時期であり、今回調査で再び明らかになったのは、コロナ流行拡大の影響下、「オフィス賃料の安い地方に移転することで経営立て直しを図るケースは多い」と帝国データバンクは分析。

 「電気代の高騰などコスト増加要因が多いなか、経営コストを圧縮するため首都圏外へ退避する企業は今後も増加する可能性がある」。さらに、テレワークやウェブ会議が浸透するなかで、企業における本社の在り方が見直されつつあり、こうした「本社移転ニーズの拡大により、企業における「脱首都圏」の流れが定着するかどうかが注目される」という。

 実際、2022年通年では、上半期のペースが続いた場合、首都圏外への企業移転は2001-2002年以来20年ぶりに2年連続で300社を超える見込みだ。そうなった場合、1990年以降、昨年(351社)に次ぐ2番目の高水準となる可能性がある。

移転先トップは「茨城県」、4年ぶりの多さ 移転先はより遠方・広範囲へ拡大
移転先トップは「茨城県」、4年ぶりの多さ 移転先はより遠方・広範囲へ拡大

 ちなみに今年上半期、首都圏から地方へ移転した企業の転出先で、最も多かったのが茨城県の18社だった。これに続いたのは、大阪府(17社)、愛知県(13社)で、首都圏からの転出先として10社を超えたのはこの3府県のみだった。

 首都圏から離れた大都市などに移転先が集中する一方で、新潟県(8社)のほか、群馬県(9社)など、首都圏に隣接する地域へ移転する企業も引き続き多い。そして、「移転先はより遠方・広範囲へと広がりをみせている」と帝国データバンクはいう。

 他方、2022年上半期、地方から首都圏への転入企業は124社にとどまり、過去10年で最少となった。コロナ禍で企業移転の動きが全面的にストップした2020年1~6月の水準(125社)を下回り、「企業の首都圏流入の動きは停滞化の兆しがある」。

 その結果、2022年上半期は、首都圏からの転出企業が転入企業を44社上回る「転出超過」となったほか、前年同期(14社)に比べて大幅増加した。「このペースで推移した場合、22年通年の転出超過社数は70社を超える可能性が高い。この水準は、2001年(転出超過が92社)以来20年ぶり」の多さとなる、と帝国データバンクはみている。

 今年上半期、地方から首都圏へ移転した企業の転入元では、大阪府(22社)が最も多かった。次いで愛知県の17社、北海道の11社だった。