カルチャー

創業110周年のタカラスタンダードが「ホーロー×アートプロジェクト」を発表

大手住宅設備機器メーカーであるタカラスタンダード(大阪市)が24日、住宅建材やキッチンなどの水回りに使用されるホーローを使用した「ホーロー×アートプロジェクト」の第一弾となる作品を発表した。5月30日に創業110周年を迎え、このたびリニューアルした本社エントランスで、お披露目会が行われた。

プロジェクトの背景には、同社が創業以来手掛けてきた素材であるホーローの認知度をさらに高めるとともに、アーティスト支援で社会貢献を進めることにある。これまでもパブリックアートなどのホーローアートを制作してきたが、今回新たにプロジェクトとしてスタートさせたことについて、同社代表取締役社長の渡辺岳夫氏は、「この5、6年でホーロー技術が進化した。ホーローにインクジェット印刷ができるようになったし、艶消しホーローが作られるようになり、デザインの幅が非常に広がった。美術芸術品を作るにしても、従来以上に良いものができるのではないかということで、もう一回アートホーローにチャレンジした」と経緯を述べた。
さらに、「アート事業でお金を儲けようというつもりは全く考えていない。アーティストと一緒に作品作りをすることで、刺激を受け、われわれのホーロー技術のレベルアップにつなげていければと思っている。あるいは作品の中のいろんなアート部分を商品のデザインに転嫁していくのも面白いと思っている」と語った。

第一弾を製作したのは、普段はフレスコ画を制作している美術作家・壁画アーティストの川田知志(かわた・さとし)氏。フレスコ画とは、漆喰を壁に塗りその上に水溶き顔料で絵を描く技法のことで、ヨーロッパのルネッサンス期に最盛期で、ミケランジェロの「最後の審判」などで知られる。
今回の作品では、日本海側の漂着物を壁画にし、ホーローの表面に壁画を印刷して複雑な形にカットし、立体感を出すように並べた。「ホーローの第一印象はツルツル。普段やっていることは、ツルツルとは程遠くてかなりガサガサ」だとし、ホーローの“ツルツル”や、フラスコ画の“ザラザラ”とは違った凹凸感を目指したと製作を振り返った。会場では、絵画を鉄板に印刷し、吹き付けた釉薬の上から櫛や綿棒、竹串などで引っ掻く「櫛引」のデモンストレーションも行われた。

ホーローは、金属とガラス質を融合させてできる複合素材。同社営業本部パネル事業部の木村啓作課長は、「当社は“高品位ホーロー”と呼ばれる高耐久の素材を用いている」とし、システムキッチンなどの部材のほかに、壁材としても製品化しており、油性ペンで描いても水と布巾で軽く拭いて消せる新商品の壁材を会場に展示した。「病院のオペルーム、分娩室やICUでは過去からも使っており、抗菌・抗ウイルスの新しい素材も発売した」とホーローのさらなる可能性を示した。60年代に発表したホーローキッチンをはじめ、最新のシステムキッチン、同社の歴史を刻んだギャラリーも同時に公開した。