カルチャー

アジア各地への旅、大震災直後の東北などから生と死を見つめて 初の大規模個展「祈り・藤原新也」を11月26日から開催

ポスター「祈り・藤原新也」展

 「今のあべこべ社会は、生も死もそれが本物であればあるだけ、人々の目の前から連れ去られ、消える。街にも家にもテレビにも新聞にも机の上にもポケットの中にもニセモノの生死がいっぱいだ」—―藤原新也(1983年の著書「メメント・モリ」より)。

 本当の死を見ることによって本当の生を生きようとしてきた藤原は、世界各地で生と死をみつめ、そして大震災直後の東北やコロナ禍の無人の街に立った。

 そうしたこれまでの道程と人への思いをそのタイトルに込めた「祈り・藤原新也」展が11月26日(土)から来年1月29日(日)まで世田谷美術館で開催される。

 公立美術館で大規模に開催される個展は今回が初めて。200点以上の写真と言葉により、50年以上にわたる藤原の表現活動の軌跡を俯瞰(ふかん)できる初の機会となる。

 「祈り」をキーワードに、15ほどのテーマが連なり、ひとつの壮大なストーリーを形成。そのテーマには、〇死を想え(メメント・モリ)、生を想え(メメント・ヴィータ)〔インド〕〇天空〔チベット〕〇イスタンブール〔トルコ〕〇アジア漢字文化圏〔朝鮮半島、香港、台湾〕〇雨傘運動〔香港〕〇いま〔日本〕〇バリの雫〔インドネシア〕などがある。

 藤原は1944年に福岡県門司市(現北九州市)に生まれた。東京藝術大学在学中に旅したインドを皮切りに、アジア各地を旅し、写真とエッセイによる『インド放浪』、『西蔵放浪』、『逍遥游紀』を発表する。83年に出版された単行本『東京漂流』はベストセラーに。同年に発表された『メメント・モリ』は若者たちのバイブルとなり、ロングセラーとなった。

 89年にはアメリカを起点に西欧へと足をのばし、帰国後は自身の少年時代を過ごした門司港で撮影した「少年の港」をはじめ、日本にカメラを向けている。現代の殺伐(さつばつ)を伝えるニュースを背に、大震災直後の東北を歩き、コロナ禍で無人となった街に立った。
 藤原の主な受賞歴は、第3回木村伊兵衛写真賞、第23回毎日芸術賞など。

 さらに、藤原による特別講演会が、12月10日(土)午後2時から3時半まで同美術館で行われる。参加方法など詳細は11月1日(火)に美術館ウェブサイトなどで発表される。

 展覧会公式書籍・グッズもミュージアムショップで販売される。公式書籍は304ページにおよぶ大ボリュームで、全文書き下ろし。展示されていない作品も多数掲載されている。A5横型のコンパクトサイズで美しいレイアウト。税込み2,970円。グッズには、オリジナルTシャツ(5種、各4,950円)、ポストカード(18種、各198円)などがある。

 「祈り・藤原新也」展の開催時間は、午前10時から午後6時まで(最終入館時間は午後5時半)。休館日は、毎週月曜日。ただし、2023年1月9日(月・祝)は開館、1月10日(火)は休館。年末年始(12月29日から1月3日)も休館となる。

 観覧料は、一般1,200円、65才以上が1,000円、大高生が800円、中小生が500円。
 電話はハローダイヤルで050-5541-8600。