SDGs

【この人に聞く!】ワカメをシャンプーにアップサイクル ブランド「ura」を立ち上げた生産者の三浦尚子さん(1)

自然と人との共生を目指すセルフケアブランド「ura」。
自然と人との共生を目指すセルフケアブランド「ura」。

 「漁業」と聞いてみなさんが想像するものは? 男社会? 重労働? 天候との戦い? 漁業に限らず、第一次産業に携わる人は男性のイメージが強い、という人も多いかもしれない。体力や腕力が必要な作業では、男性がより活躍できる場面が多いこともあるだろう。そのような中、大学卒業後に漁業に触れ、「もっと海の仕事がしたい!」と、神奈川から岩手に移住した一人の女性がいる。今年5月、自然と人が寄り添う暮らしを目指すライフスタイルブランド「ura」を立ち上げた三浦尚子(みうら・ひさこ)さん(31)だ。

ワカメの生産者でuraを立ち上げた三浦尚子さん。
ワカメの生産者でuraを立ち上げた三浦尚子さん。

 なぜ、都会育ちの女性が漁業を? 生産者として三浦さんが目指すものは? 岩手県陸前高田市で、9割生産者・1割編集者として暮らす三浦さんに話をうかがった。

四季の移ろいに惹かれて

 三浦さんが初めてワカメの作業を行ったのは23歳の時。ゼミの活動で以前から交流があった漁師が人手を探していて、1カ月間のアルバイトとして初日から漁船に乗り込んだ。細かい説明はほとんどなく、見よう見まねの作業。早朝からの仕事は驚きの連続だったという。ワカメを刈り取り、ゆでて塩漬けにするという一連の作業。「いきなり船に乗って大丈夫?」「(作業で忙しいけど、初対面の人に)あいさつはすべき?」「緑だと思っていたけど、海にあるワカメは茶色なんだ」何もかもが新鮮だった。そして、船の上では黙々と作業に打ち込む漁師たちも、仕事が終わるといろいろと話しかけてくれた。「『(大学では)何をしてたの?』と聞いてくれたり、夕飯をごちそうになったりした」と三浦さんは話す。

カキの作業をする三浦さん(右)ら。
カキの作業をする三浦さん(右)ら。

 大学で国際協力などを学んだ神奈川育ちの女性が、突然、漁師たちの仲間入りをするだけでも衝撃。しかし、さらにびっくりすることには、三浦さんは一旦実家に戻った後、翌月には陸前高田市へ移住している。三浦さんは、「1カ月間は大変だったけど、すごく楽しかった。そして、毎日見ていた海が見られなくなるのは寂しいと考えていたら、帰りの新幹線の中で泣きそうになった」と振り返る。ワカメ漁が終わると次はカキのシーズンに入る。「もっと(海の)仕事のことを知りたい」「もう少し(陸前高田に)いたい」気付くと、陸前高田の“海の人”になっていた。

自然と人との共生を目指して

 「自然の変化を感じることができるのがおもしろい」と今の生活を語る。「(海は)毎日違う色をしている。風が吹く・雨が降るというだけで全然違う。実家にいたころは思わなかった。ここ(陸前高田)に来て、季節の移り変わりを感じるようになったのはとても豊かなこと」と漁業の魅力を説明する。陸前高田の生活と自然が、自分にとっての癒やしになっている三浦さん。だからこそ、お世話になった人々やその自然に恩返しがしたいのだという。

ワカメエキスを使用しているのがuraの特徴。
ワカメエキスを使用しているのがuraの特徴。

 三浦さんは従業員としてワカメ・カキの養殖に携わる一方、2020年には独立してワカメの養殖を開始。SNSなどを通して自分の経験を伝えることで、漁業についてもっと知ってもらい、漁業のハードルを下げることができればと考えている。5月に立ち上げたライフスタイルブランド「ura」も、自然の循環や環境について多くの人が考えるきっかけになればと願っている。その詳細についてpart2でお伝えする。

M.O.