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【この人に聞く!】漁業のため関東から東北へ移住 未活用資源を商品化したブランド「ura」の三浦尚子さん(2)

ライフスタイルブランド「ura」から発売された、ワカメの茎をアップサイクルしたシャンプーとコンディショナー。それぞれ税込み4,500円。
ライフスタイルブランド「ura」から発売された、ワカメの茎をアップサイクルしたシャンプーとコンディショナー。それぞれ税込み4,500円。

 廃棄物を出さずに資源を循環させることが前提のサーキュラーエコノミー。大量生産が当たり前だった経済ではとにかく消費することが奨励されたが、限られた資源をムダなく活用することは自然の理にもかなっている。ワカメ生産者の三浦尚子さんは、自然や環境についてもっと考えるきっかけを作りたいと、ライフスタイルブランド「ura」を立ち上げた。本業は漁業。毎日、早朝から海に出かける日々だ。忙しい仕事と掛け持ちしながら三浦さんが目指すものとは? Part2では、ブランドのコンセプトや今後の展望などについて聞いた。

――大学卒業後、2014年に神奈川県相模原市から岩手県陸前高田市へ移住。現在も従業員としてカキなどの養殖作業に携わる一方、約2年前に開業して、自身でもワカメの養殖を始めた。独立に踏み切ったきっかけは何だったのか?

三浦 理由は二つある。開業してみたいという気持ちはあったが、できないだろうなとも思っていた。しかし、周りから「独立しないの?」とすごく聞かれ、応援してくれる声で、やりたいという気持ちが高まった。もう一つは、ワカメの漁場が空きタイミングが良かったから。このまま従業員として働いてスキルが上がっていくかというと、どうだろうと思っていた。独立することでスキルを上げたいと思った。

――ブランド「ura」を作ろうと思った理由は?

三浦 2年ぐらい前から、捨てている部分を活用できないか考え始めた。単純にもったいないと思った。使い道を思い付かないから捨てている。でも、視点を変えて見た時に違う価値になる可能性があるのではと。まずは、私が欲しいものを作りたかった。漁業の仕事を始めた時、あまり考えずに作業をしていた。でも、紫外線や潮風をすごく浴び、髪がガビガビに痛んだ。肌荒れもひどい。最初の半年ぐらいで「ちゃんとケアしてないとまずい」と感じた。そこからスキンケア・ヘアケアを気にするようになった。

 最初はスキンケアクリームを考えていたが、シャンプーのサンプルを使った時に「これで作りたい!」と確信。ヘアケアにすることに。シャンプーとコンディショナーは、ワカメ(の茎)を使っているのがポイント。コンセプトは“春の海”。ワカメを収穫する時期が3月・4月の春ごろ。収穫時期の春の海が感じられるような香りになっている。また、収穫する早朝の4時・5時は、(空が)グラデーション(色)になって夜が明けていく。そのように、香りが少しずつ変わっていくようなイメージにしている。ベルガモットとシダーウッドは使いたいと思っていた。

朝の海は、uraのコンセプトにもなっている。
朝の海は、uraのコンセプトにもなっている。

――uraでは“自然の循環”のことをとても意識している。その思いはどこから?

三浦 大きなきっかけはなく、(被災地という)この土地にいるからかもしれない。一次産業の仕事は、自然災害のリスクがすごくある。自分もいつか経験する可能性はあると思いながら生活している。海水温が高くなってきていたり、毒性のプランクトンが大量発生したり。少しずつ変化してきているのが暮らしの中で見える。最近では、豪雨・洪水・土砂災害などが頻発している。普通に生活していても目に見えて分かる変化があり、危ないことなのではと感じている。

 何ができるかは分からないが、シャンプーを使うことで自然を考えるきっかけになったり、捨てる部分を使っているから、もしかすると環境に配慮しているかもしれない、といった理由で使ってもらえたりしたらと思っている。せわしなく日々が過ぎていくが、少し立ち止まって暮らしを見つめ直すきっかけになればうれしい。

――今後の展開は?

三浦 農家さんと一緒に何かできたらとは思っている。一次産業の仕事は、食べ物を生産することがメイン。廃棄されるものを使って、器など食べ物ではない日用品を作っていきたい。

海上で作業する三浦さん。
海上で作業する三浦さん。

<三浦さんの一日のスケジュール(7月の場合)>

4:00~6:00 今シーズン使用したワカメ養殖ロープの掃除。連絡の返信(個人事業)。

6:30〜12:00 勤務しているマルテン水産で、カキの出荷梱包・稚貝を養殖ロープに挟み込みする仕込み作業。

13:00~15:00 午前中に挟み込みをしたカキの稚貝ロープを、海上に設置している養殖筏に吊るしに行く作業と掃除。サイズ分けをした出荷用のカキをネットに入れる作業。

16:00〜17:00 個人事業の仕事の用事や私用などを済ませる。または、ワカメのロープ掃除など。

19:00〜20:00 毎週定期のオンラインミーティング(週1)。サポートしている自主活動メディアのオンラインミーティング(月1)。

三浦さんのnote:https://note.com/hisako

M.O.