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過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる 映画『ヒトラーのための虐殺会議』が全国公開

ph1 【修正最新版】『ヒトラーのための虐殺会議』ポスター

 「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです」—―1985年5月8日にワイツゼッカー西ドイツ大統領が行った敗戦40周年を記念する演説より。

 仮に過去に目を閉ざしたいと思う者でさえも目を閉ざすことを許してはくれない映画がやって来る。ユダヤ人絶滅計画を決定した「議論」の議事録を基に作られた映画『ヒトラーのための虐殺会議』(2022年/ドイツ/112分/配給:クロックワークス)である。

 欧州全体における1100万人のユダヤ人絶滅政策を決定した史上最悪のビジネス会議の全貌に迫る、この作品は、1月20日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラスト有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかで全国公開される。

 1942年1月20日正午、ドイツ・ベルリンのバンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部長のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、高官15人と秘書1人による会議が開かれた。議題は「ユダヤ人問題の最終解決」について。「最終解決」とは欧州における1100万人ものユダヤ人を計画的に抹殺することを意味するコード名。

 法律や倫理といった観点からの質問は飛んだが、移送、強制収容と労働、計画的殺害などさまざまな方策について誰一人として異論を唱えることなく議決、その時間はわずか90分。史上最悪の会議の全貌が80年経った今、明らかになる。

『ヒトラーのための虐殺会議』 © 2021 Constantin Television GmbH, ZDF
『ヒトラーのための虐殺会議』 © 2021 Constantin Television GmbH, ZDF

 「労働が不可能なユダヤ人は迅速に始末する方が人道的」
 「民族のごった煮を解消してドイツ文化を浸透させる民族改造の必要性」
 「役立つユダヤ人は残し、道路建設などをさせて、最終的には処分する」
 「穴を掘る代わりに渓谷を利用した」
 「射殺は非効率だから毒ガスによる“安楽死”を」
 「ガスで殺したユダヤ人を、他のユダヤ人に運ばせ、そのユダヤ人も最終処分する」との発言に対して、「エレガントですな」との返事。

 こうした現代に生きる我々には耳を疑うような発言が次々に飛び出した会議であり、途中の休憩時間には、自分の子どもや妻の話をする無神経さ、いや想像力の欠如。

 最終的に、国民社会主義者の支配下で600万人のユダヤ人が殺害された。
 ドイツ人であるマッティ・ゲショネック監督は1952年にポツダムで生まれた。本作は、バンゼー会議から80年後にあたる2022年に制作された。

 重い題材だが、私たち日本人も目を背けてはいけない映画である。戦後78年目となる今年を、タモリのいうような「新たな戦前」としないためにも。